アジャンターの石窟寺院群
第19窟の入口。ファサードや柱部分には、立像や坐像などの精緻な装飾が刻まれている

遺産DATA

地域 : 西・南アジア 保有国 : インド 所在地 : Maharashtra State, Aurangabad District , Soyagon Taluka, Lenapur Village 分類 : 文化遺産 登録年 : 1983年 登録基準 : (i) (ii) (iii) (vi) 遺産の面積 : 82.42㎢ バッファ・ゾーン : 786.76㎢ 座標 : N20 33 11.2 E75 42 0.9

about

忘れ去られていた石窟群

インド西部ムンバイから北東に360kmの岩崖に、インド最古期の仏教壁画が残る石窟寺院があります。約600mほどの岩崖に点在する大小30の石窟は、前期(紀元前2世紀〜後2世紀)と後期(グプタ朝最盛期の5世紀〜7世紀)にかけて造営されました。石窟寺院群は、インドにおける仏教の衰退とともに忘れ去られていましたが、19世紀初頭に英国駐留軍の士官がトラ狩りの最中に偶然「発見」し、再び日の目を見ることとなりました。

アジアの仏教美術の源流

前期窟は装飾が少なく小型で簡素なものが多い一方、王侯貴族の寄進によって造営された後期窟は、多彩な壁画や浮き彫りで装飾されています。また、形態や用途によっても2種類に分類されます。ストゥーパ(仏塔)や仏像を安置した、祈りと瞑想のための祠堂である「チャイティヤ窟」と、僧侶の滞在・居住のための僧房「ヴィハーラ窟」です。アジャンターにある30の石窟のうち、チャイティヤ窟は5つで、残りはヴィハーラ窟です。これらの窟には釈迦の前生や仏教の教えを表す浮彫りや壁画が施され、いずれも美術的価値の高いものばかりです。壁画は、粘土と石灰による下地に顔料で描く「テンペラ画法」という技法で描かれています。アジャンターでの技法や壁画の構成などは、後に中央アジアや中国を経由して日本にまで伝わり、アジアの仏教美術全体に大きな影響を及ぼしました。

アクセス

最寄りのアウランガバード空港から車またはバスで2〜3時間。

執筆協力者PROFILE

細谷 正文
細谷 正文
大東文化大学・フェリス女学院大学講師/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

早稲田大学卒業。損害保険会社勤務の傍ら世界遺産を勉強し、退職後いくつかの大学にて関連講座を担当。現在は大学講師と趣味の音楽(クラシック歌手)の二刀流。

Properties

第10窟

第10窟

Cave No.10

前期チャイティヤ窟。前期窟は、装飾が少なく簡素な造りで、仏陀の偶像はあまり見られない点が特徴。第10窟は中央にストゥーパ(仏塔)が置かれており、インド最古級の壁画が残る。
第1窟

第1窟

Cave No.1

寺院群東端に位置する後期ヴィハーラ窟。仏陀が快楽を捨て去り、修行の道へ進む前生の姿を描いた「マハーシャーナカ本生譚」や、法隆寺金堂壁画の勢至菩薩像に影響を与えたとされる「蓮華手菩薩像」の壁画が残る。
第19窟

第19窟

Cave No.19

後期チャイティヤ窟。窟内部には仏像と一体化したストゥーパ(仏塔)があり、釈迦の教えが壁画や浮き彫りで描かれている。この窟の説話図は彩色や筆致の繊細さが際立っており、芸術的価値がつまった石窟とされる。
第26窟

第26窟

Cave No.26

後期チャイティヤ窟。アジャンター石窟寺院群の中で最大規模の石窟。中はアーチ型の天井で、荘厳な列柱が連なる。内部には長さ7mの涅槃仏像があり、インドでも最大級を誇る。

遺産DATA

保有国 : インド
所在地 : Maharashtra State, Aurangabad District , Soyagon Taluka, Lenapur Village
分類 : 文化遺産
登録年 : 1983年
登録基準 : (i) (ii) (iii) (vi)
遺産の面積 : 82.42㎢
バッファ・ゾーン : 786.76㎢
座標 :N20 33 11.2 E75 42 0.9

アクセス

最寄りのアウランガバード空港から車またはバスで2〜3時間。

執筆協力者PROFILE

細谷 正文
細谷 正文
大東文化大学・フェリス女学院大学講師/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

早稲田大学卒業。損害保険会社勤務の傍ら世界遺産を勉強し、退職後いくつかの大学にて関連講座を担当。現在は大学講師と趣味の音楽(クラシック歌手)の二刀流。