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スペイン最後のイスラム教国「グラナダ王国」の歩み
アンダルシア地方グラナダに位置するアルハンブラ宮殿、ヘネラリーフェ離宮、アルバイシン地区は、かつてのイスラム王朝時代の宮殿都市としての面影を残す遺構です。1232年、住民から招かれたイスラム勢力ナスル族のムハンマド1世によって、この地にグラナダ王国(ナスル朝)が興りました。当時は8世紀から続くレコンキスタ(国土回復運動)の最中にあり、周辺には小さなイスラム教国が残るのみでした。ナスル朝は、キリスト教勢力の大国カスティーリャ王国の封建的家臣として従うことで領土を守ってきました。しかし、14世紀半ばにヨーロッパでおきたペスト大流行や、キリスト教国同士の争いで滞っていたレコンキスタの最熱などにより、1479年に強大なスペイン王国が成立します。これに伴って、グラナダは1492年に陥落しレコンキスタは完結を迎えました。
イスラム建築と庭園の最高傑作「アルハンブラ宮殿」と「ヘネラリーフェ離宮」
アルハンブラ宮殿は、グラナダ王国成立から間もない1238年に建造が始まりました。約170年の歳月を経て完成した宮殿は要塞としての機能を持つだけではなく、建築と装飾の両面で美術的価値の高さがうかがえます。宮殿内では、植物やアラビア文字を図案化したアラベスク模様や。ムカルナスと呼ばれる鍾乳石に似せた天井装飾、水路や光で表現した聖典コーランの中の楽園などイスラム教の信仰や世界観が随所に見られ、イスラム建築の最高傑作とも称されています。また、宮殿東部にあるヘネラリーフェ離宮は、王族の避暑地として14世紀頃に造営されました。居住区域を含めた建造物群よりも庭園の方が広い面積を占めており、建物と自然との関係が逆転していることが特徴です。水路や噴水、柳から糸杉といった多様な木立、さらにはバラやカーネーションなどの花々で彩られるなどイスラム式庭園の傑作とも呼ばれる要素を随所で感じることができます。
イスラム教とキリスト教の生活様式が融合する白壁の街「アルバイシン地区」
アルハンブラ宮殿からダーロ川を挟んだ対岸の丘にあるのが「アルバイシン地区」です。グラナダ最古の居住区で白壁の家々にモスクが密集する中に迷路のような細道が続いています。建物に白い壁が採用されたのは、強い日差しを反射し、室内温度の上昇を抑えるためと考えられています。レコンキスタ完了の1492年以降、グラナダには多くのキリスト教徒が流入してきました。その結果、グラナダの市街には後期ゴシック様式やプラテレスコ様式をはじめとする教会や修道院が建設されます。現在のアルバイシン地区では、中世のイスラム様式の生活様式と、近世におけるキリスト教徒の生活様式が融合した景観と街の雰囲気を味わうことができます。
アクセス
アルハンブラ宮殿:マドリードのアトーチャ駅からグラナダ駅へ列車で約3時間、グラナダでは「イサベル・ラ・カトリカ広場前」から「メインエントランス前」へバスで約10分。
執筆協力者PROFILE
広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。
Properties
コマレス宮
Torre del Cubo
ライオンの中庭
Patio de los Leones
ヘネラリーフェ離宮
Generalife
アルバイシン地区
Albayzín
アクセス
アルハンブラ宮殿:マドリードのアトーチャ駅からグラナダ駅へ列車で約3時間、グラナダでは「イサベル・ラ・カトリカ広場前」から「メインエントランス前」へバスで約10分。
執筆協力者PROFILE
広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。
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