アルマデンとイドリア-水銀鉱山の遺跡
アルマデンの水銀鉱山公園。総計25t以上の水銀が採掘されたと推定されている

遺産DATA

地域 : ヨーロッパ 保有国 : スペイン, スロベニア共和国 分類 : 文化遺産 登録年 : 2012年 登録基準 : (ii) (iv) 遺産の面積 : 1.041㎢ 座標 : N38 46 31 W4 50 20

about

消えゆく技術と産業文化を伝える鉱山都市

スペインのアルマデンとスロベニアのイドリアは、近年まで世界最大の水銀鉱山として名を馳せてきました。アルマデンでは古代から水銀の抽出が行われており、イドリアでは1490年に水銀が発見されます。そして、両地点ともハプスブルク家出身のスペイン国王フェリペ2世の時代にスペインの領土であったことから、水銀の供給拡大へ大きく関わっていきました。現在、世界的に毒性の強い水銀の使用は禁止される方向にあることから、消えていく技術や産業文化を伝える貴重な遺跡とも言えます。

国際通貨の変化と水銀の需要拡大

イドリアで水銀が発見された時代は、1492年にレコンキスタ(国土回復運動)が完結し大航海時代の幕開けとなった時代と重なります。アメリカ大陸各地を植民地化していくスペインでは、1556年にフェリペ2世が国王に即位し「太陽の沈まぬ国」と呼ばれる最盛期を迎えます。その中で、アメリカ大陸の各植民地で発見されたのが銀鉱山でした。アマルガム法と呼ばれる銀の精錬技術には水銀が活用されたことから、水銀の需要が急激に拡大していきます。一方、経済では国際通貨として銀貨を中心とするシステムへ移行していきます。以来、アルマデンとイドリアは、水銀精錬に特化した技術的・社会的なシステムを構築して発展していきました。

水銀生産がもたらしたコミュニティとその遺構

アルマデンとイドリアは銀の精錬に必要不可欠な水銀生産を掌握したことで、市場での主導権を獲得し、短期間で新旧大陸間交易の中心となります。その結果、近代の水銀精錬における社会構築や付随するライフスタイルを象徴する存在へと発展していきました。構成資産には、イドリアの水銀貯蔵所と基本施設、鉱夫宿舎、鉱山劇場のほか、アルマデンのレタマル城や宗教施設、古くからの住居も含まれています。これらの場所からは水銀抽出の社会的・経済的背景や水銀鉱山で必要とされた教育や医療の歴史も辿ることができます。

アクセス

【アルマデン】マドリードから車で約3時間半。【イドリア】リュブリャナバスステーションからバスでイドリアまで列車で約1時間15分。

執筆協力者PROFILE

ミド
ミド
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/Podcast「行きたくなる世界遺産!」パーソナリティ

広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。

遺産DATA

分類 : 文化遺産
登録年 : 2012年
登録基準 : (ii) (iv)
遺産の面積 : 1.041㎢
座標 :N38 46 31 W4 50 20

アクセス

【アルマデン】マドリードから車で約3時間半。【イドリア】リュブリャナバスステーションからバスでイドリアまで列車で約1時間15分。

執筆協力者PROFILE

ミド
ミド
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/Podcast「行きたくなる世界遺産!」パーソナリティ

広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。