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世界で最も状態のよい紀元前3千年紀頃の遺跡群
オマーン北部、ハジャル山脈のアフダル山地には、前期青銅器時代にあたる紀元前3千年紀頃の集落と墓地遺跡群が残ります。1972年にデンマークの調査隊が発見し、同時代の集落・墓地遺跡としては、世界で最も完全かつ保存状態の良い遺跡群のひとつとされています。これらの遺構は、この地域で繁栄したマガン国と関連があるものとみられていますが、マガン国の人々がどこから来て、どのような系統に属する民族なのかは今でも詳しくはわかっていません。ただ、メソポタミア文明のアッカド帝国の記録によれば、マガン国は産出した銅をメソポタミアやインダス川流域に供給することで富を得ていました。記録があることからも、両文明とつながりのあった重要な国であったということがわかります。

社会の変遷を示す遺跡群
この遺産はバット、アル・フトゥム、アル・アインの3つの遺跡で構成されています。バットとアル・フトゥムでは、直径約20~25mの円塔が複数残ります。用途は不明ですが、内部には井戸があり、開口部がほとんどなく、部屋が独立していることから、一説には食糧の貯蔵庫や水利施設として使われたと推測されています。バットでは円塔の周囲に墓地遺跡があり、乾式石積みでつくられた「蜂の巣状」墓がみられます。墓はハフィート期(紀元前3200~前2700年頃)に丘の稜線につくられたものと、ウンム・アン・ナール期(前2700~前2000年頃)にワディ(涸れ川)の段丘につくられたものが存在し、バットの南東約20kmに位置するアル・アインでも同様の形状の墓が発見されています。特にワディの段丘には100基以上の墓が密集して立ち、計画的に造営されたものと見られています。北側に位置する最も古い墓は少人数向けで、入口や埋葬室も一つのみです。一方、年代が新しいと思われる南側の墓は、より大規模で複数の入口と埋葬室をもち、集団葬向けに設計された複雑な構造となっています。また、副葬品からは、長距離交易経済による生活水準の向上と社会変化を見て取ることができます。


アクセス
首都マスカットから車で4時間。公共交通機関はなし。
執筆協力者PROFILE
世界遺産検定初代マイスターの一人。地歴公民科の教諭として7年間大阪の公立高校で勤務。現在、世界遺産アカデミー認定講師として大学や私立中学で講義、授業を展開。また、自身のYouTubeチャンネル「翼の世界史チャンネル」で受験世界史の動画を配信。
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世界遺産検定初代マイスターの一人。地歴公民科の教諭として7年間大阪の公立高校で勤務。現在、世界遺産アカデミー認定講師として大学や私立中学で講義、授業を展開。また、自身のYouTubeチャンネル「翼の世界史チャンネル」で受験世界史の動画を配信。
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