about
ローマ人も整った大浴場
イギリス南西部の都市バースは、1世紀に天然温泉をローマ式浴場に利用したローマ人によって築かれました。イギリス唯一の温泉地でありキングス・スプリング、ヘトリング・スプリング、クロス・バス・スプリングの3つの主要な温泉を有しています。アングロサクソン時代には、古英語で温泉を意味する言葉から「バース」と呼ばれるようになりました。また、バースの温泉には、壮大な浴場と社交場として建てられたローマ浴場のほかに、現代のサウナに似たテウダリウムや、水風呂のようなフリギダリウムも備えられていました。温泉が癒しとレクリエーションの中心となったこの街では現在でも、ローマ浴場やスリス・ミネルヴァ神殿が良好な状態で残っており、アルプス以北で最も有名かつ重要なローマ遺跡の1つとされています。
富裕階層の保養地として再発展を遂げたジョージアン時代
ローマ人による温泉都市の拡張以降、サクソン人が一帯を支配した4〜5世紀頃まで浴場は使用され続けましたが、やがてローマ人がイギリスから撤退したことで浴場は放棄され、都市も衰退しました。しかし、7世紀頃に病気療養施設を含んだ修道院が築かれると、街は再建され、中世には羊毛産業の中心地へと発展していきます。さらに、1688年の名誉革命から18世紀前半にかけてイングランドでは文化・芸術面で円熟期を迎えます。このことが起因して、18世紀初頭からのジョージアン時代(ジョージ1世〜3世の治世)に、バースも温泉地として大規模な再開発が行われ、ロンドンの王侯貴族や富裕階層も訪れる保養所として発展しました。
豊かな緑と街並みが調和するガーデン・シティ
ジョージアン時代にバースの街の建設に大きな役割を担ったのは、建築家ジョン・ウッドと、起業家で大理石の採石場を所有していたラルフ・アレン、社交界で重要な存在を示していたリチャード・ナッシュです。彼らはバースをヨーロッパで最も美しい都市にするべく奔走しました。ジョン・ウッドは当時流行していたパッラーディオ様式を取り入れ、建物に囲まれたクイーンズ・スクエアや高級住宅地「ザ・サーカス」を築きます。彼の息子ジョン・ウッド・ジュニアは、半円形の住宅地「ロイヤル・クレセント」を完成させ、その後もロバート・アダム、トーマス・ボールドウィン、ジョン・パーマーなど名だたる建築家が街並みと自然環境が調和した美しい都市づくりに貢献しました。バースの都市空間と景観は、視覚的かつ物理的に周囲の緑豊かな田園地帯を取り込み、19世紀の都市計画家たちによって生み出されたガーデン・シティ(田園都市)の原則を先取りしました。
アクセス
ロンドン「パディントン駅」から最寄りの「バース・スパ駅」まで列車で約90分
執筆協力者PROFILE
広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。
Properties
ローマ浴場
Roman Baths
バース寺院
Bath Abbey
ザ・サーカス
The Circus
ロイヤル・クレセント
Royal Crescent
アクセス
ロンドン「パディントン駅」から最寄りの「バース・スパ駅」まで列車で約90分
執筆協力者PROFILE
広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。
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