about
市民の自由と都市の象徴
ベルギーとフランス北部に点在する鐘楼は、都市の中心部に建てられた高くそびえ、広場を見下ろすように建てられた、町の構成やアイデンティティを形作る重要な存在です。かつて「ネーデルラント」と呼ばれていたベルギー、オランダ、ルクセンブルク、フランス北部にまたがる地域のうち、特に南部では11世紀~17世紀にかけて、都市の中心部に鐘楼が建てられるようになりました。鐘楼は、もともとは特許状によって得られた共同体の独立の証として建てられ、領主の「城塞」や教会の「鐘塔」と並ぶ「第三の塔」として、市民の権力や自由を象徴しました。時代を経るごとに、鐘楼は都市の繁栄や富の象徴としての役割も担うようになりました。
個性豊かな鐘楼群
鐘楼群は11~17世紀にかけて建設されました。初期の鐘楼は城塞のような重厚な造りで、14~15世紀には細長い塔型へと変化しました。単独で建てられているものもあれば、市場や市庁舎に付属しているものもあり、教会の鐘楼が市民的な機能を担っている場合もあります。ロマネスクからアール・デコまで、建築様式の幅もとても広いのが特徴です。例えばベルギーのアントウェルペンの聖母大聖堂の鐘楼はゴシック様式の傑作で、高さ123mの尖塔は町のランドマークとなっています。フランス側では、リール市庁舎の鐘楼が有名です。1932年に完成した高さ104mの比較的新しい鐘楼で、都市再開発に際して建設されました。アラスの鐘楼は、ゴシック様式の優美な姿で知られていますが、第一次世界大戦で破壊され、戦後に元の姿を忠実に再建されました。このように地域の歴史、建設時期、使用された素材、建築家によって外観や構造は異なりますが、いずれも市民の自由と独立の象徴で、都市や地域のアイデンティティと深く結びついています。
国境を越えた文化遺産の保護
世界遺産に登録されているのは、ベルギー北部のフランドル地域と南部のワロン地域、フランス北部のノール=パ・ド・カレーとピカルディ地域にまたがる、計56件の鐘楼群です。これらの鐘楼群は、まず1999年にベルギー北部のフランドル地域と、南部のワロン地域にある32の鐘楼群が「フランドルとワロンの鐘楼群」として世界遺産に登録されました。2005年にベルギーのジャンブルーの鐘楼と、フランス北部の23の鐘楼が追加され、構成資産の数は56件となって現在の遺産名で拡大登録されました。ベルギーとフランスの国境を越えて広がる鐘楼群は、市民が自由を勝ち取った歴史を象徴する貴重な文化遺産です。
アクセス
【ベルギー】成田、羽田、関空などからブリュッセル空港へ直行便または乗継便で移動。ブリュッセルから鉄道で、ブリュージュまでは約1時間、アントワープまでは約40分。
【フランス】パリのシャルル・ド・ゴール空港へ直行便で移動。パリからアラス、リール、カンブレーなどへはTGVやTERで移動。
執筆協力者PROFILE
民間企業勤務のサラリーマン。趣味は世界遺産と言語。「リラの僧侶」の名で世界遺産ポッドキャスト「ニュースで読み解く世界遺産」のラジオパーソナリティーを担当。好きな世界遺産はリラの修道院。
アクセス
【ベルギー】成田、羽田、関空などからブリュッセル空港へ直行便または乗継便で移動。ブリュッセルから鉄道で、ブリュージュまでは約1時間、アントワープまでは約40分。
【フランス】パリのシャルル・ド・ゴール空港へ直行便で移動。パリからアラス、リール、カンブレーなどへはTGVやTERで移動。
執筆協力者PROFILE
民間企業勤務のサラリーマン。趣味は世界遺産と言語。「リラの僧侶」の名で世界遺産ポッドキャスト「ニュースで読み解く世界遺産」のラジオパーソナリティーを担当。好きな世界遺産はリラの修道院。
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