about
7,000年の時を経て営まれる人々の生活
レバノンの地中海沿岸に位置するビブロスは、人々の生活が継続して営まれてきた世界最古の都市の一つです。最も古い住居跡は約7,000年前のもので、泥土でつくられた簡素な小屋が集まった漁村でした。紀元前3,000年頃、地中海交易を担うフェニキア人によって港町として発展し、王墓やオベリスク神殿などが建造されました。神殿からは、経済的・文化的に強く結ばれていたエジプトのファラオからの貢ぎ物である、太陽を表す円盤やスフィンクスなどの遺物が出土しています。商業都市として栄えたビブロスはその後、アッシリアやギリシャ、ローマなど相次いで支配者が入れ替わり、636年にイスラム勢力の支配下に入りました。市内には、フェニキア時代やローマ時代、イスラム時代の建造物だけでなく、12世紀に十字軍が築いた要塞や城郭の遺構、そしてキリスト教の聖堂など異なる時代の遺構を見ることができます。
レバノン杉の輸出によってもたらされた繁栄
ビブロスの繁栄は、レバノン杉が自生する山地と、海に突き出る岩礁に守られた良港を有する恵まれた立地条件によるものでした。古来よりレバノン杉は貴重な建材・香油であり、エジプトのファラオたちはピラミッドや船の建造、さらにはミイラ作りに必要な樹脂を抽出するために、金貨を積んでビブロスへこの杉を買い求めました。ソロモン王(在位 紀元前967頃~前928年)がエルサレムの神殿建設に際し、杉材とビブロスの職人を連れ帰ったという話も有名です。ビブロスはこれらの交易を通じて莫大な富を蓄積し、地中海貿易の中心地として発展を遂げました。そのきっかけとなったレバノン杉は、現在のレバノンの国旗や国章のデザインにもあしらわれています。
アルファベットの原型が生まれた地
ビブロスは、現代のアルファベットのルーツである「フェニキア文字」発祥の地として知られています。広範な地中海貿易を展開したフェニキア人は、他国の商人との取引を円滑に進めるため、わかりやすい表音文字を考案しました。その最古のものとされるのが、紀元前900年頃の「アラヒム王の石棺」に刻まれた碑文です。この石棺は深い岩穴に安置されていたため盗掘を免れ、1922年に発生した地すべりによって姿を現しました。紀元前10世紀前後には「A」や「H」などの表記が完成しており、紀元前8世紀頃のギリシャでアルファベットへと変化したといわれています。また、ギリシャ人はエジプトのパピルスをビブロス経由で輸入したため、ギリシャ語で紙のことをビブロスといい、それが「バイブル(聖書)」の語源となりました。
アクセス
ベイルートのラフィク・ハリリ国際空港からビブロス(現ジュバイル)まで車で約30分。
執筆協力者PROFILE
幼少期に飛行機から見たさまざまな地形や街の姿に魅了され、大学で地理学を専攻。教壇に立つなかで世界遺産の可能性に惹かれ、世界遺産検定マイスターに。気象予報士の資格を持ち、趣味で各地の世界遺産とそこにみられる気候・気象現象との関連を探っている。
アクセス
ベイルートのラフィク・ハリリ国際空港からビブロス(現ジュバイル)まで車で約30分。
執筆協力者PROFILE
幼少期に飛行機から見たさまざまな地形や街の姿に魅了され、大学で地理学を専攻。教壇に立つなかで世界遺産の可能性に惹かれ、世界遺産検定マイスターに。気象予報士の資格を持ち、趣味で各地の世界遺産とそこにみられる気候・気象現象との関連を探っている。
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