カルパティア山脈と他のヨーロッパ地域のブナ原生林
ヨーロッパに広がるブナ林と、ブナ林が育む各地域の多様な生態系が、世界遺産として保護されている

about

ヨーロッパを代表する原生林と貴重な生物

ヨーロッパの広範囲に広がる10種のブナ原生林は、氷河期後期からの生物進化やブナの分化の過程が知れる貴重な遺産です。ブナの他にもヨーロッパナラをはじめ、絶滅の危機に瀕した80種を含む1,067種の植物や101種の鳥類、73種の哺乳類などが登録地に生息しています。また、広大な森林には、IUCNのレッドリストにも記載されているキンメフクロウも生息しています。2007年にスロバキアとウクライナの世界遺産として登録されましたが、その後、登録範囲が順次拡大されていきました。この地のブナ原生林は、現存するヨーロッパブナ(ファグス・シルヴァティカ)の原生林として世界最大であり、その中には世界最樹高のブナの標木も含まれています。

厳しい気候条件を耐えて拡大したブナ林

かつてはヨーロッパ本土の40%を占めていたヨーロッパブナの林は世界の他地域と同様に減少しているものの、この地では広範囲で残っており、北半球でのブナ林の変遷を伝える貴重な場所とされています。ヨーロッパブナはヨーロッパ南部を中心に各氷期(氷河期)の厳しい気候条件に耐えて生き延びてきました。そして、約1万1,000年前の最終氷期になると、徐々に生育範囲を拡大させ、ヨーロッパ大陸の大部分をカバーするほどになりました。特にドイツの古代ブナ林は、現在も続く氷期以降の陸上生態系の進化を示す代表例で、ドイツ最大の島であるリューゲン島にまで範囲が及んでいます。北半球の様々な環境の中におけるブナ林の拡大を理解する上で不可欠な地域となっています。

アクセス

ドイツ・リューゲン島:ベルリン「ゲズント・ブルンネン」駅から「リューゲンダム」駅を経由して「ザスニッツ」駅まで列車で約4時間30分。「ザスニッツ」駅からビジターセンターのあるケーニヒスシュトゥールまで車で約10分。

執筆協力者PROFILE

ミド
ミド
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/Podcast「行きたくなる世界遺産!」パーソナリティ

広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。

アクセス

ドイツ・リューゲン島:ベルリン「ゲズント・ブルンネン」駅から「リューゲンダム」駅を経由して「ザスニッツ」駅まで列車で約4時間30分。「ザスニッツ」駅からビジターセンターのあるケーニヒスシュトゥールまで車で約10分。

執筆協力者PROFILE

ミド
ミド
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/Podcast「行きたくなる世界遺産!」パーソナリティ

広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。