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戦後の混迷の時代に目指した新たな王都の理想郷
イタリア南西部ナポリ近郊カゼルタに、ポーランド継承戦争が終わった18世紀末の混迷の時代に、ナポリ王・カルロ7世(ブルボン家・カルロス3世)の命で、ヴェルサイユとマドリードの王宮に対抗してイタリアで最も壮大な王宮と庭園、水道橋等が建築されました。建築したのはルイージ・ヴァンヴィテッリとその息子。王宮以外にも、広大な森林地帯に24の国の庁舎、付属劇場等が作られ、19世紀にはブルボン家の貴族たちが春と秋の離宮として利用されました。
豪華春蘭な王宮とそれを彩る庭園、要は水利施設にあり
王宮は1,200もの部屋、34の壮大な階段があり、特に注目すべきはエントランス。100段を超える大階段があり、壁面には色石が多用され、王冠を被りライオンに跨るカルロ7世の像が出迎えます。またその庭園も世界遺産として評価されました。並木道と並行して、頂点の大滝まで約3㎞にわたり緩やかな傾斜を水が流れ落ち、途中に小さな滝、噴水、彫像が配置されています。まるで自然の傾斜による水路に見えますが、なんと約40kmも離れた山から水をひき、複数の山と谷を迂回し、庭園へ届ける仕組みになっているのです。こうした水路は、サン・レウチョ地区の紡績機などの動力源にもなっています。
国策として栄えたサン・レウチョの絹産業
カゼルタの北西に位置するサン・レウチョ地区では、絹織物の繊維工場が隆盛を極めました。もともと王家の狩猟場であった地域ですが、カルロ7世の命により、先の水路整備もしかり、当時の技術革新の実験舞台でもありました。カルロ7世と、王位を引き継いだ三男フェルディナンド1世もまた、サン・レウチョに絹工場を建設し、さらに養蚕・製糸・織物工場、労働者のための住居を増築していきます。当時ナポリは貧しく、困窮していた時代。カルロ7世は次々と巨大建築を建てていきましたが、それは自らの権力を示すためでもあり、国家の公共事業として雇用を増やし、ナポリの人々を救うためでもありました。親子でこの国を立て直す、そうした想いが伝わります。
アクセス
ナポリ・カポディキーノ国際空港からタクシーで宮殿、あるいはナポリの中央駅まで行き、そこから電車でカゼルタ駅下車し、徒歩でアクセス。
執筆協力者PROFILE
前職(株)JTBにて約12年間、海外旅行のパッケージツアーの企画・造成に携わり、世界遺産も含めた観光地のプロモーションや送客に貢献。2021年より国土交通省 観光庁にて勤務、オーバーツーリズム対策や持続可能な観光地域づくりを担当し、現在に至る。世界遺産アカデミー客員研究員、(社)日本イコモス文化観光国内学術委員、(社)台湾世界遺産登録応援会アドバイザー。
アクセス
ナポリ・カポディキーノ国際空港からタクシーで宮殿、あるいはナポリの中央駅まで行き、そこから電車でカゼルタ駅下車し、徒歩でアクセス。
執筆協力者PROFILE
前職(株)JTBにて約12年間、海外旅行のパッケージツアーの企画・造成に携わり、世界遺産も含めた観光地のプロモーションや送客に貢献。2021年より国土交通省 観光庁にて勤務、オーバーツーリズム対策や持続可能な観光地域づくりを担当し、現在に至る。世界遺産アカデミー客員研究員、(社)日本イコモス文化観光国内学術委員、(社)台湾世界遺産登録応援会アドバイザー。
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