昌徳宮
ソウル中心部に近く、周辺に歴史的な街並みも広がることから『宗廟』と合わせてソウル観光の定番

遺産DATA

地域 : 東・東南アジア 保有国 : 大韓民国 分類 : 文化遺産 登録年 : 1997年 登録基準 : (ii) (iii) (iv) 座標 : N37 34 44 E126 59 28

about

風水と儒教が息づく宮殿

昌徳宮(チャンドックン)は、景福宮の離宮として、朝鮮王朝第3代太宗によって1405年に建設されました。自然の地形を活かして設計されたこの宮殿は、伝統的な風水思想と儒教の理念を体現した希少な建築例とされています。場所は朝鮮半島の北部・白岳山の麓に位置し、敷地全体が地形と調和するように配置されました。王の居住区、政務区、儀式空間などは儒教的な原則「前朝後寢」に基づいて設計されており、空間構成そのものが儒教の思想を表しています。このようなことから、昌徳宮は単なる王宮ではなく、朝鮮王朝の精神的な世界観を象徴する場所として評価されています。

日本の侵略を越えて再生された昌徳宮

昌徳宮は、16世紀末に豊臣秀吉が朝鮮に侵略した壬辰倭乱(文禄・慶長の役)により、ほとんどの建物が焼失しましたが、17世紀以降に再建されています。元々は景福宮が政治の中心拠点でしたが、同様の理由で焼失し、機能できなくなったため、昌徳宮がその役割を担うことになります。その後、250年以上にわたって事実上の王宮として使われ、政治と文化の中枢となりました。その建築様式は、木造・瓦葺きの屋根、石の基壇、彫刻が施された柱など、独自の芸術文化を色濃く伝える要素が詰まっています。建物の配置や素材は、自然と一体化することを意識して設計されていましたが、再建の過程で失われることなく受け継がれてきました。歴史の荒波を越えてよみがえった昌徳宮からは、韓国建築の粋を感じることができます。

庭園と自然が織りなす美

昌徳宮の最大の見どころのひとつが秘苑(ピウォン)と呼ばれる広大な庭園です。この庭園は自然の地形に沿って設計されており、芝生、蓮池、東屋、花木、そして5万6,000本を超える樹木に彩られた美しい空間です。クルミやカエデ、イチョウなど四季折々の風情が楽しめる植物が多く、庭そのものが生きた芸術作品のようです。訪れた王族たちはここで静けさと自然の美しさを感じながら心を癒したといわれています。このような人工物と自然との絶妙なバランスは、東アジアにおける庭園芸術の粋を集めた例とされ、現在も多くの人々に深い感動を与えています。

アクセス

ソウル市内「安国駅」から昌徳宮まで徒歩5分。

執筆協力者PROFILE

KANAE
KANAE
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/Podcast「行きたくなる世界遺産!」パーソナリティ

世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。

遺産DATA

保有国 : 大韓民国
分類 : 文化遺産
登録年 : 1997年
登録基準 : (ii) (iii) (iv)
座標 :N37 34 44 E126 59 28

アクセス

ソウル市内「安国駅」から昌徳宮まで徒歩5分。

執筆協力者PROFILE

KANAE
KANAE
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/Podcast「行きたくなる世界遺産!」パーソナリティ

世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。