チチェン・イツァの古代都市
マヤとトルテカという2つの文明が融合した遺跡

遺産DATA

地域 : 北米 保有国 : メキシコ合衆国 分類 : 文化遺産 登録年 : 1988年 登録基準 : (i) (ii) (iii) 座標 : N20 40 57.86 W88 34 7.2

about

ユカタン半島北部のマヤ文明の遺跡

チチェン・イツァはユカタン半島北部のマヤ文明の中心地の一つで、マヤ文明とトルテカ文明が融合した遺跡です。チチェン・イツァは最初にマヤ系の民族によって都市が形成されましたが、後に一度都市は放棄されました。その後10世紀にトルテカ文明(テオティワカン文明崩壊後にメキシコ全域に広がった文明)の影響を受けたイツァ人によって都市が再興されました。そのためチチェン・イツァでは10世紀以前の遺構が多く残る地域を「旧チチェン」、10世紀以後を「新チチェン」と呼び両者は建築様式等でもそれぞれ異なる特徴がみられます。

チチェン・イツァの衰退

チチェン・イツァは13世紀以降大きな建設が行われずに、15世紀半ば頃には急激に衰退していきました。チチェン・イツァは10世紀にユカタン半島の都市であるウシュマル、マヤパンとの間で同盟を結成しました。結成初期はチチェン・イツァは強い影響力を持っていました。しかし時が経ち同盟が解体されると戦いが起こり、チチェン・イツァは最も大きな被害を受け、敗北しました。イツァ人は逃亡したために、チチェン・イツァでは巡礼地以外の機能は失われました。

チチェン・イツァのピラミッド「エル・カスティーリョ」

エル・カスティーリョは新チチェンにある9層の階段状のピラミッドです。階段は365段で一年が表現されていると考えられ、ピラミッドの最上部にはククルカン(ケツァルコアトル)神殿が建てられています。春分と秋分の日には階段の欄干に三角形をつなぎ合わせたようなジグザグの影ができ、蛇に羽毛が生えたとされるククルカンを表現しているように見え、「ククルカンの降臨」と呼ばれています。また調査によりエル・カスティーリョの下にセノーテがあることもわかっています。

アクセス

メリダ、またはカンクンからバスやツアーを利用するのが一般的。2024年に全線開業したマヤ鉄道を利用する方法もある。

執筆協力者PROFILE

角濱 さくら
角濱 さくら
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/大学生

筑波大学人文・文化学群人文学類在学。2021年度「世界遺産✕SDGsチャレンジ!」小論文部門、2022年度「世界遺産✕SDGs教員養成プログラム」で最優秀賞。現在は中央アジアを中心とする無形文化遺産の保護や活用について関心がある。

Details

聖なる泉(セノーテ)

聖なるセノーテ

The Sacred Cenote/ El Cenote Sagrado

セノーテとは地下水がたまった天然の井戸のこと。エル・カスティーリョの北東500mにある「聖なるセノーテ」には、古くから水の神への崇拝の一環として貴重な財宝や生け贄が放り込まれてきた。これまでに200体以上の遺骨や宝石、金貨、陶器などが発見されている。
カラコル

カラコル

El caracol

マヤ人が建てた数少ない円形の塔で螺旋階段をもつ。夏至と冬至の日に太陽の光が窓に差し込むため、天文観測に使用されていたと考えられている。マヤの天文学が非常に発達していたことがわかる遺構の一つ。
ツォンパントリ

ツォンパントリ

Tzompantli

新チチェンに位置する。ツォンパントリは死者に捧げられたもので、マヤの様々な遺跡から見つかっている。チチェン・イツァのツォンパントリは大型で、基壇には浅浮き彫りの頭蓋骨が500体以上並んでいる。
大球戯場

大球戯場

Great Ball Court / Gran juego de pelota

大球戯場ではゴムの木から抽出した液体で作られたボールを使った儀礼的な競技が行われた。競技場は特殊な音響効果があり、例えば南側から声を発すると北側で反響し反対側まで聞こえるという設計がされていた。
戦士の神殿

戦士の神殿

The Temple of the Warriors / El templo de los guerreros

戦士の神殿は新チチェンにあり、高さは12m。中央神殿には鷲、ジャガー、戦士が人間の心臓をむさぼり食べる様子が描かれている。神殿は4つの基壇から成り、南側には200本の円形と四角形の柱が並ぶ。

遺産DATA

地域 : 北米
分類 : 文化遺産
登録年 : 1988年
登録基準 : (i) (ii) (iii)
座標 :N20 40 57.86 W88 34 7.2

アクセス

メリダ、またはカンクンからバスやツアーを利用するのが一般的。2024年に全線開業したマヤ鉄道を利用する方法もある。

執筆協力者PROFILE

角濱 さくら
角濱 さくら
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/大学生

筑波大学人文・文化学群人文学類在学。2021年度「世界遺産✕SDGsチャレンジ!」小論文部門、2022年度「世界遺産✕SDGs教員養成プログラム」で最優秀賞。現在は中央アジアを中心とする無形文化遺産の保護や活用について関心がある。