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歴史都市コルドバの変遷
スペイン南西部、アンダルシア地方にあるコルドバは、イスラム教、ユダヤ教、キリスト教の文化が融合する歴史ある商業都市です。紀元前3世紀に共和制ローマの支配下に入った時にはカルタゴの植民都市が存在し、6世紀には西ゴート王国がこの地を統治します。その後イスラム勢力が制圧し、756年に後ウマイヤ朝の首都としてヨーロッパにおけるイスラム教の最重要拠点となります。10世紀には、コンスタンティノープル、ダマスカス、バクダードと並ぶ大都市として繁栄し、市街には300以上のモスクが立ち並びました。一方、コルドバはキリスト教世界が目指すレコンキスタ(国土回復運動)の対象都市となります。1212年にムワッヒド朝が衰退すると、1236年にはカスティーリャ王国のフェルナンド3世によってコルドバは奪還され、大モスク「メスキータ」はキリスト教聖堂へ改修されるなど、キリスト教文化が浸透していきました。歴史地区では、それぞれの宗教文化の痕跡が今も残されています。その他にも、フェルディナント王子とイサベル女王が居城とした「カトリック両王のアルカサル」や、キリスト教支配の初期に築かれた「カラオーラの塔」など、レコンキスタを象徴する建築物も見ることができます。
後世のイスラム美術・建築に影響を与えた「メスキータ」
後ウマイヤ朝を築いたアブドゥル・ラフマーン1世が、786年から建設を開始したのが「メスキータ(大モスク)」です。元々この場所には西ゴート族が築いた教会があったと言われています。9〜10世紀にかけて増改築が行われ、当時はイスラム教の聖地メッカのマスジド・ハラーム(メッカの大モスク)に次いで、2番目の広さを誇る広大なモスクとなりました。内部にはイスラム建築特融の馬蹄形アーチ、モザイク装飾、ミフラーブなどが見られ、芸術的価値も非常に高く評価されています。こうした要素は、後のイスラム美術や建築に大きな影響を与え、西洋におけるイスラム文化の存在を証明する希少な建築物となっています。
東洋と西洋のハイブリッド建築
メスキータには、それまでのイスラム建築には見られなかった革新的な要素が取り入れられています。上層が半円形、下層が馬蹄形という特徴的な二層アーチは、高い屋根を支えるための構造的解決策であり、礼拝空間に広さと明るさをもたらしました。石とレンガを組み合わせた設計は、ローマや西ゴートの建築技術を融合させたもので、当時としては斬新でした。赤と白のアーチが林立する空間は「円柱の森」と呼ばれています。さらに、キリスト教支配下においては、ゴシック様式のリブ・ヴォールトも導入されました。卵形アーチの組み合わせは、建物全体に安定性と堅牢さを与えており、フランスでリブ・ヴォールトが一般化するよりも100年早い先駆的な例とされています。こうした要素は、東西の建築的・芸術的価値を融合させたハイブリッド建築として、メスキータの独自性を際立たせています。
アクセス
マドリードから高速列車AVEで約1時間40分。
執筆協力者PROFILE
広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。
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マドリードから高速列車AVEで約1時間40分。
執筆協力者PROFILE
広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。
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