要塞都市クエンカ
「宙吊りの家」は現在は抽象美術館になっている

遺産DATA

地域 : ヨーロッパ 保有国 : スペイン 分類 : 文化遺産 登録年 : 1996年 登録基準 : (ii) (v) 遺産の面積 : 0.2279㎢ バッファ・ゾーン : 1.7049㎢ 座標 : N40 4 35.832 W2 7 54.3

about

イスラム教徒が築いた岩山の要塞

スペイン中部、マドリードの南東170kmに位置するクエンカは石灰岩の岩山の頂に築かれた要塞都市です。9世紀、立地の良さに目を付けたイスラム教徒は、この地に要塞を築きコルドバ防衛の拠点としました。しかし、1177年にレコンキスタ(国土回復運動)によりキリスト教徒が入植すると、市街には要塞を中心に聖堂、修道院などのキリスト教建築が次々と建てられました。クエンカはイスラム建築を基本とする建築物の複合体でありながら、カスティーリャ王国の主要都市として君臨し、ルネサンス期に大きな隆盛の時期を迎えます。世界遺産としての価値をなす建造物の多くは、キリスト教徒入植後にイスラム勢力からの反撃に備えるもので、堅牢な城壁に囲まれた街は自然景観すらも圧倒します。田園風景の中心にそびえる岩山の頂の街は「景観都市」の原型とも称され、その美しさを今も放ち続けています。

1,000m×300mの土地に密集するキリスト教建築

12世紀、レコンキスタによってキリスト教徒が入植した後に、クエンカを治めていたカスティーリャ王国のアルフォンソ8世の命によって大モスクの跡地にキリスト教の大聖堂建設がはじまります。この大聖堂が、スペイン初のゴシック様式建築の一つとされています。ファサードは20世紀に再建されたものですが、前面に広がるマヨール広場には16世紀建造のペトラス修道院や、18世紀建造の市庁舎などが立ち並んでいます。南北約1km×東西約300mの狭い土地の中央をアルフォンソ8世通りが貫き、サン・ミゲル聖堂、サン・ペドロ聖堂、そしてパラドールとして使用されているサン・パブロ修道院といった建築物が残っています。

断崖にそびえる「宙吊りの家」

旧市街について語る上で欠かせないのが、通称「宙吊りの家」(カサス・コルガダス)です。土地に限りがあるクエンカでは、3~4階建ての家屋が多く、断崖絶壁のギリギリまで土地を使おうとした人々の努力が垣間見えます。「宙吊りの家」はその顕著な例として有名で、フカール川を見下ろす断崖の上に築かれた3軒続きの家屋です。14世紀に築かれた後、16世紀まで改築が重ねられ、古くは市庁舎としても使用されました。

 

アクセス

マドリード「チャマルティン・クララ・カンポアモール」駅からクエンカ「フェルナンド・ソベル」駅まで高速鉄道AVEで約1時間、フェルナンド・ソベル駅からプラザ・マヨールまでバスで25分。

執筆協力者PROFILE

ミド
ミド
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/Podcast「行きたくなる世界遺産!」パーソナリティ

広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。

遺産DATA

保有国 : スペイン
分類 : 文化遺産
登録年 : 1996年
登録基準 : (ii) (v)
遺産の面積 : 0.2279㎢
バッファ・ゾーン : 1.7049㎢
座標 :N40 4 35.832 W2 7 54.3

アクセス

マドリード「チャマルティン・クララ・カンポアモール」駅からクエンカ「フェルナンド・ソベル」駅まで高速鉄道AVEで約1時間、フェルナンド・ソベル駅からプラザ・マヨールまでバスで25分。

執筆協力者PROFILE

ミド
ミド
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/Podcast「行きたくなる世界遺産!」パーソナリティ

広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。