about
一人の発明による、小さな寒村から工場の町への発展
ダーウェント渓谷の北から流れるダーウェント川の周囲に、かつてはヒツジが放牧されている小さな寒村がありました。18世紀後半、産業革命の時代になると、それまで人力で木綿から糸を生成した紡績機を使っていましたが、水力を使った工場がこの寒村の一つ、クロムフォード村に造られ、クロムフォード・ミルとして稼働します。こうして世界で初めて、水力を使った紡績技術を実現させたのがリチャード・アークライトです。その後、このダーウェント川に沿って、ベルパー、ミルフォード、ダービーなど多くの村や街で工場ができ、一寒村であったこのエリアは一大工場地帯と変貌を遂げました。
安全で扱いやすい工業は、若者の労働を促し、そしてコミュニティ形成へ
アークライトによって寒村が一大工業地帯になっていったのには、単に彼の発明や工場の稼働だけではありません。もともと人口も少ない地方部であったため、何よりも労働力の確保が重要でした。工場長は工場での労働者の管理だけでなく、彼らの住居を構え、その家族も管理していました。こうして職場や路上での不正行為に対する罰金などの条例、警備、および食料と福祉の提供など、一つのコミュニティを形成し、機能していったのです。当時、鉱物の採掘に若者の労働は危険を伴う一方、機械を使った紡績工業は比較的容易に働けたことも、若者の労働力の確保に繋がりました。こうした労働環境の整備は、クロムフォードから、ベルパー、ダービーへと波及し、新たな産業コミュニティの発展に寄与しました。
アクセス
ロンドンからノッティンガム駅まで鉄道で約1時間半。そこからダーウェントバレーラインに乗り換えてクロムフォード駅まで約1時間。
執筆協力者PROFILE
前職(株)JTBにて約12年間、海外旅行のパッケージツアーの企画・造成に携わり、世界遺産も含めた観光地のプロモーションや送客に貢献。2021年より国土交通省 観光庁にて勤務、オーバーツーリズム対策や持続可能な観光地域づくりを担当し、現在に至る。世界遺産アカデミー客員研究員、(社)日本イコモス文化観光国内学術委員、(社)台湾世界遺産登録応援会アドバイザー。
アクセス
ロンドンからノッティンガム駅まで鉄道で約1時間半。そこからダーウェントバレーラインに乗り換えてクロムフォード駅まで約1時間。
執筆協力者PROFILE
前職(株)JTBにて約12年間、海外旅行のパッケージツアーの企画・造成に携わり、世界遺産も含めた観光地のプロモーションや送客に貢献。2021年より国土交通省 観光庁にて勤務、オーバーツーリズム対策や持続可能な観光地域づくりを担当し、現在に至る。世界遺産アカデミー客員研究員、(社)日本イコモス文化観光国内学術委員、(社)台湾世界遺産登録応援会アドバイザー。
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