ガラパゴス諸島
太平洋上で3つのプレートが交わる地域にあり、ホットスポットから噴き出したマグマで形成された火山群島

遺産DATA

地域 : 南米 保有国 : エクアドル共和国 所在地 : Cantons: San Cristobal, Santa Cruz and Isabela, Province of Galapagos 分類 : 自然遺産 登録年 : 1978年 範囲拡大年 : 2001年 危機遺産 : 2007年~2010年 登録基準 : (vii) (viii) (ix) (x) 遺産の面積 : 1,870.26㎢ 座標 : S0 41 23.496 W90 30 4.7

about

赤道直下に浮かぶ絶海の孤島

ガラパゴス諸島は、南米のエクアドル本土から西に約1,000km、赤道直下の東太平洋沖に位置しています。大小19の島と周辺の岩礁からなるガラパゴス諸島は、海底火山の噴火によって誕生した島で、これまでに一度も大陸と陸続きになったことがない海洋島です。動植物は隔絶された島の環境に適応し、独自の進化を遂げていきました。現在、ガラパゴス諸島の陸地の97%は保護地区となっており、サンタ・クルス、イサベラ、サン・クリストバル、フロレアナの4つの島を除き、人は住んでいません。

天敵がいない動物たちの楽園

大陸から遠く離れたガラパゴス諸島には、海を越えることのできる鳥類や海生生物、爬虫類が多くみられます。一方で、天敵となる大型の肉食哺乳類や両生類は存在しません。このような環境下で生物は独自の進化を遂げました。現在島々で見られる植物の3分の1、陸鳥の80%以上、爬虫類のほぼすべてが固有種と考えられています。また島の周辺には複数の海流が流れており、海洋生物も豊富に生息しています。確認された約2,900種のうち、およそ18%は固有種であり、非常に高い固有率を誇ります。寒流の影響で、赤道直下にありながら熱帯と温帯が混ざり合ったような気候も特徴で、ユニークな生態系の形成に寄与しています。

進化論誕生のきっかけとなった島

1835年に測量船ビーグル号で島に足を踏み入れた英国の博物学者チャールズ・ダーウィンは、ゾウガメやイグアナ、フィンチなど島の生物を観察しているうちに、甲羅やくちばしの形状など、生物が生息する島ごとに異なる特徴をもっていることに気が付きました。ガラパゴス諸島での経験は進化論のアイデアとなり、帰国後ダーウィンが著した『種の起源』は自然科学だけでなく、当時の社会にも大きな影響を与えました。自然選択による進化の概念は、現在も生物学の礎となっています。

アクセス

執筆協力者PROFILE

宮脇 佳子
宮脇 佳子
NPO法人世界遺産アカデミー研究員

東京外国語大学言語文化学部卒。在学中にパレスチナやヨルダンなど中東地域への留学を経験。大手メディア企業勤務を経て、2021年より現職。書籍やテレビ番組等の監修を行う。

Details

サンタ・クルス島

サンタ・クルス島

Santa Cruz

ガラパゴス諸島の中心部に位置する島。チャールズ・ダーウィン研究所内に設置されたガラパゴス国立公園は、1978年の世界遺産登録時に登録範囲となったエリアである。諸島の中で人口が最も多く、観光の拠点でもある。
イサベラ島

イサベラ島

Isabela

4分音符のような形をもつ、ガラパゴス諸島最大の島。赤道直下に位置し、最も新しい島のひとつである。1970年代に人間が持ち込んだヤギが島の生態系に悪影響を与えたため、1997〜2006年に大規模な駆除運動が行われた。
サン・クリストバル島

サン・クリストバル島

San Cristobal

ガラパゴス諸島の東端に位置する島。複数の火山が融合したことで形成された、諸島の中で最も古い島のひとつである。1835年にダーウィンが最初に上陸した島としても知られる。州都プエルト・バケリノ・モレノはこの島にある。
フロレアナ島

フロレアナ島

Floreana

ガラパゴス諸島の中で、19世紀に最初にエクアドル人が入植した島。島北部の「ポストオフィスベイ」の名は、島を訪れた船員がポストに見立ててた樽に郵便物を残し、別の船が自国宛の荷物を持ち帰って届けるという習慣に基づく。
フェルナンディナ島

フェルナンディナ島

Fernandina

ガラパゴス諸島の最西端に位置する無人島で、最も新しい島のひとつである。火山活動が活発で、2020年にも噴火が観測された。リクイグアナやウミイグアナが多く生息し、ガラパゴスペンギンも見ることができる。
ガラパゴスペンギン

ガラパゴスペンギン

Galapagos penguin

世界最小のペンギンのひとつで、世界で最も北に生息するペンギンである。フェルナンディナ島、イサベラ島、フロレアナ島などで見られる。
ガラパゴスアシカ

ガラパゴスアシカ

Galapagos sea lion

主にガラパゴス諸島で繁殖する海生哺乳類。島々で一年中みることができる。ビーチで昼寝をする姿もみられるが、IUCNのレッドリストでは絶滅危惧種(EN)に指定されている。
ガラパゴスゾウガメ

ガラパゴスゾウガメ

Galapagos tortoise

「ガラパゴス」諸島の名の由来となった生物(カメはスペイン語で「ガラパゴ」)。現在6つの島に10種の亜種が生息していると考えられている。島ごとに体長や甲羅の形状などに違いがある。平均寿命は100年以上。
ウミイグアナ

ウミイグアナ

Marine iguana

世界で唯一海で暮らし、エサを捕食することのできるイグアナ。ガラパゴス諸島の固有種で、島ごとに亜種が存在し、大きさや体色に違いがある。サウスプラザ島ではリクイグアナとの交雑種(ハイブリッド)が確認されている。
ガラパゴスリクイグアナ

ガラパゴスリクイグアナ

Galapagos land iguana

黄色みを帯びた皮膚が特徴のリクイグアナ。ガラパゴス諸島には本種とサンタフェリクイグアナ、ガラパゴスピンクイグアナの3種が生息している。島に生育するサボテンの葉や果実をエサとする。
アオアシカツオドリ

アオアシカツオドリ

Blue-footed booby

東太平洋沿岸に生息する、青い足をもつカツオドリ。足の色はエサに含まれるカロテノイド色素によるもので、青色が鮮やかな個体ほどエサをよく確保できて健康な傾向にある。オスはメスへの求愛中に足を誇示するダンスを踊る。
アカアシカツオドリ

アカアシカツオドリ

Red-footed booby

赤い足と青いくちばしをもつカツオドリ。主に大西洋、太平洋、インド洋に生息し、日本にも飛来の記録がある。トビウオやイカを狙って潜水し捕食する。

遺産DATA

地域 : 南米
所在地 : Cantons: San Cristobal, Santa Cruz and Isabela, Province of Galapagos
分類 : 自然遺産
登録年 : 1978年
範囲拡大年 : 2001年
危機遺産 : 2007年~2010年
登録基準 : (vii) (viii) (ix) (x)
遺産の面積 : 1,870.26㎢
座標 :S0 41 23.496 W90 30 4.7

アクセス

執筆協力者PROFILE

宮脇 佳子
宮脇 佳子
NPO法人世界遺産アカデミー研究員

東京外国語大学言語文化学部卒。在学中にパレスチナやヨルダンなど中東地域への留学を経験。大手メディア企業勤務を経て、2021年より現職。書籍やテレビ番組等の監修を行う。