about
王が築いた、自然と調和する修道院
『ゲラティ修道院』は、ジョージアが政治的にも経済的にも強大であった中世の「黄金時代」に建てられました。修道院は、統一ジョージア王国のダヴィド4世(通称「建設王」)が1106年に建設を開始し、1130年に息子のデメトレ王によって完成しています。さらに13世紀から14世紀初頭には多くの教会が増築されました。修道院は美しい山と川に囲まれた丘の上にあり、まるで風景の一部のように調和しています。また、壁画やモザイク画などが今も美しく保存されており、ジョージア黄金時代の代表といえる作品となっています。
学問と文化が花開いたアカデミー
この場所は信仰の場であると同時に、アカデミー(教育機関)の設立によって重要な文化の中心地でもありました。アカデミーでは哲学者や学者が集まって学問を深めていました。ダヴィド4世によって招かれた新プラトン主義のヨハネス・ペトリツィや、アリストテレス思想に基づく教義書で知られるアルセン・イカルトエリといった人物がここで活動していました。また、修道院には写字室があり、多くの書物が作られました。その中には12世紀の彩飾写本など、現在も国立写本センターに保存されている貴重なものもあります。
世界遺産登録後に除外された大聖堂
本遺産は、1994年に「バグラティ大聖堂とゲラティ修道院」として世界遺産に登録されました。バグラティ大聖堂は、統一ジョージア王国の初代国王バグラト3世の命で築かれたもので、国の統一を象徴する建造物でした。2000年代に入り、ジョージアでは大聖堂の宗教的機能を復活させることを目的に、建造物の再建工事が検討されていましたが、ICOMOSや世界遺産委員会はOUV(顕著な普遍的価値)と真正性、完全性を脅かすおそれがあるとして工事を行わないよう要請していました。それにもかかわらず、2008年に再建工事が始まり、2010年には危機遺産リストに記載されました。しかし、工事の内容は本来の価値や姿を損ない、かつ不可逆的なものと判断され、バグラティ大聖堂は2017年に登録から除外されました。そのため、現在は「ゲラティ修道院」のみが世界遺産の登録対象となっています。
アクセス
トビリシからクタイシまでバスで約4時間、クタイシからゲラティ修道院までバスで約30分。
執筆協力者PROFILE
世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。
アクセス
トビリシからクタイシまでバスで約4時間、クタイシからゲラティ修道院までバスで約30分。
執筆協力者PROFILE
世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。
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