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ビザンツ様式とコーカサス地方の建築様式の融合
301年に世界で初めてキリスト教を国教としたアルメニアの、ロリ地方に位置する『アフパットとサナインの修道院』は、主に10世紀から13世紀に創設された2つの修道院です。長きにわたりアルメニア教会の中心拠点として重要な役割を果たしてきたこの場所は、10世紀以降に最盛期を迎え、500人程度の僧が暮らし学んでいました。ビザンツ教会建築とコーカサスの伝統的な建築様式の要素が融合した独特な建築様式を持ち、アルメニアの宗教建築を代表する修道院群となっています。
聖十字架を納めるアフパットの修道院
アフパットの修道院は、976年にアルメニア王アショト3世の妃、ホスロヴァヌシュ女王によって、聖十字架を奉納するために創設されました。この修道院は、ナルテックス(教会の入り口やロビー)、2つの回廊式墓所、食堂、写字室、ハマザス礼拝堂、鐘楼などで構成され、すべての建物は城壁に囲まれています。複合施設内で最も古い建物は聖ニシャン教会で、東から西にかけて細長いドーム型構造になっています。また、最初期のイエス・キリストのフレスコ画が現存しており、王座に座るキリスト、受胎告知、洗礼などの場面が描かれています。
中世アルメニア建築の代表例・サナインの修道院
一方、サナインの修道院は聖アストヴァツァツィン教会、聖アメナプルキチ教会、聖グリゴル教会、ナルテックス、写字室、鐘楼、アカデミーなどで構成されています。バグラトゥニ朝時代には、行政の中心地や王族の墓所として使われ、教区の司教たちもこの地に住んでいました。928〜944年創設の聖アスヴァツァツィン教会は、中世アルメニア建築における中央ドームを持つ十字形プランの代表例として知られています。そして、主要建築である聖アメナプルキチ教会の完成によって、修道院建築は成熟の時代を迎えました。また、サナインの修道院には、ハチュカルと呼ばれる十字架を刻んだ石碑が50基以上残り、聖アスヴァツァツィン教会の西側の壁に残るものなどは、中世アルメニア彫刻の最も優れた例とされています。
アクセス
エレバンからアフパット・サナインまで車で約3時間。
執筆協力者PROFILE
世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。
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エレバンからアフパット・サナインまで車で約3時間。
執筆協力者PROFILE
世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。
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