about
密かに守られた信仰のかたち
九州北西部に点在する『長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』は、17世紀から19世紀にかけて築かれた10の集落、城郭跡、そして教会堂で構成されており、禁教下でも信仰を守り抜いた人々の歴史を今に伝えています。信者たちは弾圧を逃れるため、海辺や離島など人目を避けられる場所に移り住み、「天草の﨑津集落」や「黒島の集落」などの共同体を形成しました。彼らは仏教や神道に似せた形式で信仰を装いながら、キリスト教の精神を独自に受け継ぎ、祈りや儀礼を工夫して、2世紀にわたり信仰を継承しました。そして1873年に禁教が解かれると、彼らは再び表舞台に立ち、教会建築などを通して現代へと引き継がれていきます。
禁教から復活へ、信仰の軌跡
1549年、フランシスコ・ザビエルによって日本にもたらされたキリスト教は、当初多くの人々に受け入れられ、慈善と救済を重んじる「ミゼリコルディア(慈悲の行い)」の精神とともに広まりました。貧しい人々を助けるこの考えは、信仰と共に生活に深く根づいていきます。しかし幕府は、キリスト教を異文化による脅威とみなし、17世紀の島原・天草一揆を機に激しい弾圧を開始します。原城跡がその舞台になります。その後、信者たちは潜伏を余儀なくされましたが、信仰は密かに受け継がれていきます。1873年、ついに禁教が解かれると、長年信仰を守り続けていた信徒たちが大浦天主堂を訪れ、ベルナール・プティジャン神父に信仰の継続を告白します。この「信徒発見」は世界に衝撃と感動をもたらしました。各構成資産からは、「始まり」「形成」「維持・拡大」「変容、終わり」という4つの段階を通じて、潜伏キリシタンの歴史をたどることができます。
アクセス
【大浦天主堂】長崎駅から車で約10分。/【原城跡】長崎駅から車で約1時間半。/【各集落】バスやフェリーなどを利用。※集落は訪問にあたり事前連絡が必要となる場合あり
執筆協力者PROFILE
世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。
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【大浦天主堂】長崎駅から車で約10分。/【原城跡】長崎駅から車で約1時間半。/【各集落】バスやフェリーなどを利用。※集落は訪問にあたり事前連絡が必要となる場合あり
執筆協力者PROFILE
世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。
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