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カスピ海南岸に弧状に広がる希少な樹木類が生育する大山塊
ヒルカニアの森林群は、アゼルバイジャン南東部からイラン北東部までのカスピ海南岸約1,000kmにわたって弧状に広がる、希少な樹木が育成する大山塊です。イラン国内の3つの州(ギーラーン州、マーザンダラーン州、ゴレスターン州)とアゼルバイジャン国内の2つの地区(レンコラン県、アスタラ県)にまたがる17の構成資産から成る連続したサイトで構成されています。この広大な森林群の歴史は、2,500万~5,000万年前の第三紀にまでさかのぼります。当時、広葉樹林や混合林は北半球の温帯地域の大部分を覆っていましたが、第四紀の氷期に入ると森林地域は後退し、北アメリカや西ユーラシア、東アジアの一部を除いて多くの種が絶滅しました。ヒルカニアの森林は後退することなく生き残り、温暖な間氷期には、ヒルカニアの森林からヨーロッパを中心に多くの植物の種が分散したと考えられています。
第三紀に起源を持つ遺存種や固有種
隔絶された環境にあるヒルカニアの森林は、第三紀に起源を持つ遺存種や固有種で構成されています。植物相の多様性は世界でも有数であり、3,200種以上の維管束植物が記録されています。森林はオリエントブナ、ナラ、シデが優占し、マンサク、ケヤキ、サワグルミ、ハンノキ、シナノキ、ニレといった温帯広葉樹林に典型的な樹木種が生育しています。また、地中海や西アジアの温暖乾燥気候に適したオリーヴやカツラ、ネムノキやマメガキといった亜熱帯地域に分布する樹木も見られます。動物相においては、ソウゲンワシ、ヨーロッパキジバト、カタシロワシ、ヨーロッパブッポウソウ、セミクビワシ、エボシガラなど、広葉樹の温帯林に典型的な鳥類180種が記録されています。この地域全体では、ペルシャヒョウやヤギの原種とされるパサン(ノヤギ)を含む58種の哺乳類が確認されています。
アクセス
イランの首都テヘランから列車またはバスでギーラーン州の州都ラシュトまで移動し、ラシュトからはローカルバスやタクシーを利用。
執筆協力者PROFILE
國學院大学文学部史学科卒。東海大学大学院文学研究科史学専攻修士課程修了。文学修士。NPO法人世界遺産アカデミー認定講師。世界遺産検定マイスター。歴史能力検定1級。世界史、世界遺産、ビッグヒストリーに関するさまざまな書籍の執筆・翻訳・監修を手掛けてきた。
アクセス
イランの首都テヘランから列車またはバスでギーラーン州の州都ラシュトまで移動し、ラシュトからはローカルバスやタクシーを利用。
執筆協力者PROFILE
國學院大学文学部史学科卒。東海大学大学院文学研究科史学専攻修士課程修了。文学修士。NPO法人世界遺産アカデミー認定講師。世界遺産検定マイスター。歴史能力検定1級。世界史、世界遺産、ビッグヒストリーに関するさまざまな書籍の執筆・翻訳・監修を手掛けてきた。
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