トプカプ宮殿
ハーレム内にある「皇帝の間」。婚礼など儀式の舞台となった

構成資産DATA

コンスタンティノープル征服直後に始まった宮殿の造営

コンスタンティノープル征服からわずか6年後の1459年、メフメト2世によってマルマラ海とボスフォラス海峡を臨む岬に建設が開始されたのがトプカプ宮殿です。1856年に宮廷がドルマバフチェ宮殿に移されるまで、トプカプ宮殿は歴代スルタンの宮廷生活と政務の場となりました。「トプカプ」の名は18世紀以降、宮殿近くにあった「大砲の門」にちなむもので、それまでは「新宮殿」と呼ばれていました。宮殿の面積はおよそ70万㎡あり、外廷、内廷、後宮(ハーレム)の3つに大きく分かれています。アヤ・ソフィアの南東にある「帝王門」と呼ばれる正門から入ることができます。

帝王門
トプカプ宮殿の入り口となっている帝王門(©muratart/Adobe Stock)

スルタンの執務の場となった第一・第二の庭

帝王門を抜けると、宮殿を囲う第一の庭があります。ここは一般の人々も立ち入ることができたエリアで、病院やパン焼き窯、造幣所などがありました。門を入ってすぐ左手には、イスタンブル最古の教会のひとつで4世紀創建のハギア・イレーネ教会があります。かつてはアヤ・ソフィアに次いで二番目に大きな教会で、オスマン帝国時代には武器庫として使用されていました。第一の庭を進んで「挨拶門」をくぐると第二の庭へと至ります。挨拶門ではスルタン以外は馬を降りて通らなければなりませんでした。中央の広場を囲うように御前会議の会議室や1,000~5,000人分の食事を賄うための厨房、兵舎、厩舎などが併設されており、会議室の近くにはハーレムへとつながる入口がありました。

「皇太子の間」
ハーレム内にある「皇太子の間」。皇太子たちが外部から隔絶された環境で過ごした場所で、ハーレムで最も美しい部屋のひとつとされる(©cabrn/Adobe Stock)

スルタンが私的生活を過ごした空間

第二の庭北側の「至福門」から入る第三の庭は、スルタンの政務と生活の場で、謁見の間やスルタンに直接奉仕する小姓の寄宿学校、宝物庫、聖遺物保管室などがありました。第二・第三の庭の西側に広がるのが、ムラト3世の治世下の16世紀後半に増築された後宮(ハーレム)です。スルタンの母后(皇太后)や王妃、愛妾、子供、使用人、帝位に就いていない王子など数百人が暮らしており、後にスルタン自身の部屋もここに移されました。スルタンとその家族のみが出入りを許され、女性たちの外出は禁じられていました。ハーレムを統治していたのは、オスマン帝国でスルタンに次ぐ権力をもつ皇太后でした。建物は6階建てですが、見学できるのは1階のみとなっています。内部は金箔や彩色タイル、象嵌細工などで豪奢に装飾されており、またハーレムを警備する宦官たちの寝室やモスクもありました。宮殿最奥部の第四の庭は、スルタンとその家族のためのキオスク(離宮)や、春にはチューリップが咲き誇る庭園が設けられました。特に1639年にバグダッド征服を記念して建設されたキオスクは、イズニクタイルや螺鈿・象嵌細工が施された美しい装飾で知られています。

第4の庭
トプカプ宮殿最奥に位置する第4の庭(©Serg Zastavkin/Adobe Stock)
バグダッド・キオスク
第4の庭にあるバグダッド・キオスクの内部。タイルやステンドグラスの美しい装飾で知られる(©BGStock72/Adobe Stock)

至宝あふれるトプカプ宮殿のコレクション

トプカプ宮殿には、さまざまなコレクションが収蔵されています。第三の庭にある宝物庫には、金や銀、ルビー、エメラルド、翡翠、真珠、ダイヤモンドなどの宝石を用いた豪華な宝飾品が展示されています。数ある宝物の中で特に有名なものが、柄の部分に3つの巨大なエメラルドとロンドン製の巻き時計が嵌め込まれた「トプカプの短剣」と、86カラットの巨大なダイヤモンドを49個のダイヤが囲う「スプーン屋のダイヤモンド」です。また、第二の庭の厨房には、1万点以上の中国製・日本製の磁器が収められており、肥前国(現在の佐賀県・長崎県にあたる)で生産された鮮やかな古伊万里もあります。これらの国宝級のコレクションは、オスマン帝国の富と繁栄を物語る存在です。

短剣
博物館に所蔵されている短剣。柄には3つの巨大なエメラルドが嵌められ、先端には巻き時計が隠されている(©legacy1995/Adobe Stock)

執筆協力者PROFILE

NPO法人世界遺産アカデミー研究員

東京外国語大学言語文化学部卒。在学中にパレスチナやヨルダンなど中東地域への留学を経験。大手メディア企業勤務を経て、2021年より現職。書籍やテレビ番組等の監修を行う。

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東京外国語大学言語文化学部卒。在学中にパレスチナやヨルダンなど中東地域への留学を経験。大手メディア企業勤務を経て、2021年より現職。書籍やテレビ番組等の監修を行う。