about
低地で暮らす人々が水害と共生してきた創意・工夫の歴史
ロッテルダム南東に位置するキンデルダイクとエルスハウトに、18世紀に建造された19基の排水用風車は、低地で暮らす人々が水害と共生してきた創意・工夫の歴史を伝えています。オリエントに起源を持つ風車は、12世紀頃に十字軍によってオランダに伝えられたとされています。当初は製粉用に使われましたが、やがて排水用に改良され、18世紀半ばに排水用風車がつくられました。風車は水害を防ぐだけでなく、湿地帯を農地や牧草地に変え、オランダを農業大国に変貌させました。
偏西風を効率よく活用した排水用風車
オランダ語の国名「ネーデルラント」が「低地」を意味するその名の通り、国土の約27%は海抜0m以下に位置しています。水はけが悪く湿地帯が多いゆえに、人々は水害対策を余儀なく行ってきました。潮の満ち引きによる水位の差を利用し、堤防でせき止めて中の湿地の水を干上がらせるポルダーをつくりましたが、干拓による地盤沈下が進行しました。自然排水だけでは水害を防げなくなり、偏西風を効率よく活用して風車を動かし、排水ポンプとして利用し始めました。
排水用風車の繁栄と衰退
排水用風車には、4枚の羽根が十字形につけられており、その羽根から得た動力で歯車を回転させることで水を低地から高地へ移動させることが可能になりました。風車の利用が最も盛んだった19世紀半ばには、オランダ全土で約1万基が稼働していましたが、蒸気式水揚げポンプや石油・電気を使用した排水設備が登場して、風車は撤去されていきました。しかし、世界遺産に登録された風車群は、非常時に予備設備として利用できるよう、常時稼働可能な状態で維持されています。2017年には、「風車守の風車と水車の運転技術」が無形文化遺産として登録されており、その文化と技術は世代を超えて継承されています。
アクセス
日本からアムステルダムのスキポール空港まで、直行便で約14時間。アムステルダムからキンデルダイクまで車で1時間ほど、電車で2時間弱。
執筆協力者PROFILE
慶應義塾大学大学院修士課程修了。桐蔭学園高校地理科教諭。神奈川県高文連社会科専門部会事務局長。東京大学空間情報科学研究センター協力研究員。(社)日本ICOMOS会員。山川出版社地理用語集編集委員。高校地理の教科書・地理用語集などを執筆・編集。
アクセス
日本からアムステルダムのスキポール空港まで、直行便で約14時間。アムステルダムからキンデルダイクまで車で1時間ほど、電車で2時間弱。
執筆協力者PROFILE
慶應義塾大学大学院修士課程修了。桐蔭学園高校地理科教諭。神奈川県高文連社会科専門部会事務局長。東京大学空間情報科学研究センター協力研究員。(社)日本ICOMOS会員。山川出版社地理用語集編集委員。高校地理の教科書・地理用語集などを執筆・編集。
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