クルディーガの旧市街
2度の世界大戦を乗り越えたクルディーガの旧市街

遺産DATA

地域 : ヨーロッパ 保有国 : ラトビア共和国 分類 : 文化遺産 登録年 : 2023年 登録基準 : (v) 遺産の面積 : 0.8433㎢ バッファ・ゾーン : 0.8885㎢ 座標 : N56 58 3.9 E21 58 17.5

about

貿易拠点として発展した街

ラトビア西部に位置するクルディーガは伝統的な都市景観が残っている街です。クルディーガの起源は13世紀に遡り、ドイツ騎士団の分団・リヴォニア騎士団が城を築いたことに始まります。14世紀にはハンザ同盟に参加しました。街が大きく発展したのは16~18世紀のクールラント公国時代です。公国の中心地として機能したクルディーガは貿易拠点としても発展を遂げ、外国人商人や職人が定住しました。そのため街にはクルディーガの伝統的な丸太造り建築だけでなく、周辺地域の影響を受けたレンガ造りや木造の建築もあり、当時の交流の様子を物語っています。19世紀頃には、交通の主役が水路から鉄道へと移りましたが、クルディーガには鉄道が敷設されず、都市の発展は停滞しました。その結果公国時代の街並みが保存されることとなりました。また、クルディーガは20世紀の大きな戦争をほとんど無傷で乗り越え、近代的な都市開発は中心部から離れた場所で行われたこともあり、街の構造は公国時代に発展した通りのレイアウトをほぼそのまま残す、稀有な例となっています。

「ラトビアのヴェネツィア」と称される街

ヴェンタ川とアレクシュピーテ川の合流点に位置するクルディーガには、街中に多くの橋が架かっています。ヴェンタ川には、1847年に築かれたレンガ造りの橋が架かっています。長さは164mあり、7連のアーチをもつこの橋は、ヨーロッパに現存するレンガ造りの橋としては最も長いもののひとつです。アレクシュピーテ川に架かる橋の一部はクールラント公国時代から存在するものもあります。旧市街を流れるアレクシュピーテ川沿いには歴史的建造物が立ち並んでおり、その光景からクルディーガは「ラトビアのヴェネツィア」という愛称で親しまれています。

国際貿易で繁栄を遂げたクールラント公国

クールラント公国(クールラント・ゼムガレン公国)は1561年に成立した公国で、クルディーガは公国の行政中心地として機能しました。周辺諸国であるスウェーデンやポーランド、ロシアなど対立する勢力の間に位置し、多くの政治的影響を受けた一方で、ヨーロッパやアフリカ西海岸、アメリカ大陸まで広がる交易ネットワークを確立し、様々な国と貿易契約を結びました。公国が最盛期を迎えたヤーコプ・ケトラー公(在位:1642~1681年)の治世下には、150以上の船舶が造られ、アフリカ西部のガンビア川河口や、カリブ海のトバゴ島にも拠点を置きました。活発な貿易活動により、17世紀後半にはクルディーガの街における商人の割合は約30%であったとも記録されています。しかし、1658年のスウェーデンによる侵攻を機に、街は大きな被害を受け、繁栄は失われていきました。1795年の第三次ポーランド分割の過程でロシア帝国に併合されました。

アクセス

首都リガからバスで約3時間。

執筆協力者PROFILE

角濱 さくら
角濱 さくら
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/大学生

筑波大学人文・文化学群人文学類在学。2021年度「世界遺産✕SDGsチャレンジ!」小論文部門、2022年度「世界遺産✕SDGs教員養成プログラム」で最優秀賞。現在は中央アジアを中心とする無形文化遺産の保護や活用について関心がある。

遺産DATA

分類 : 文化遺産
登録年 : 2023年
登録基準 : (v)
遺産の面積 : 0.8433㎢
バッファ・ゾーン : 0.8885㎢
座標 :N56 58 3.9 E21 58 17.5

アクセス

首都リガからバスで約3時間。

執筆協力者PROFILE

角濱 さくら
角濱 さくら
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/大学生

筑波大学人文・文化学群人文学類在学。2021年度「世界遺産✕SDGsチャレンジ!」小論文部門、2022年度「世界遺産✕SDGs教員養成プログラム」で最優秀賞。現在は中央アジアを中心とする無形文化遺産の保護や活用について関心がある。