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北米に初めて到達したヨーロッパ人の痕跡
ランス・オー・メドー国立歴史公園は、カナダ東部ニューファンドランド島のグレートノーザン半島の先端に位置する1,000年頃に北欧から渡来してきたヴァイキングの集落跡です。北米に初めて到達したヨーロッパ人の痕跡とされています。1960年、ノルウェーの探検家ヘルゲ・イングスタッドと考古学者である彼の妻アン・スタイン・イングスタッドによってこの遺跡は発見されました。発掘調査により8つの建物跡や溶鉱炉の跡、鉄器などの道具類のほか、ノルウェー様式の住宅の特徴を示す遺構が多数確認されています。1978年に世界で最初の世界遺産のうちの一つとして登録されました。
中世アイスランドに伝わる伝承文学『サガ』の記述
この遺跡が発見されたきっかけは12~13世紀に編纂されたアイスランドの伝承文学『サガ』に記されたヴァイキングに関する記述でした。『サガ』によると、アイスランドを経てグリーンランドに入植していたヴァイキングのレイフ・エリクソンが、997年に西方への探検航海に出たとされています。彼は「ブドウの地」または「草原の地」と訳される「ヴィンランド」を発見し、そこに上陸拠点を築いたと記されています。それまで伝説上の存在と考えられていた「ヴィンランド」がこのランス・オー・メドーの発見により一躍注目を集めることとなりました。
失敗に終わったヨーロッパ人による最初のアメリカ定住の試み
『サガ』によると、レイフ・エリクソンの帰還後、その宿営地に150人の男女が移住し入植が図られたとされています。しかし、ヴァイキングが「スクレリング」と呼んだ先住民族との間で争いが起こり、それが原因で入植地はわずか数年で放棄されました。こうして,ヨーロッパ人によるアメリカでの最初の定住の試みは失敗に終わったのです。遺跡からは、鉄の生産や木工といった活動の痕跡が見つかっており、これらの遺物は『サガ』の物語と一致しています。ヴァイキングはアイスランドとグリーンランドから大西洋を西に渡り、新たな領土を求めて探検を行っていたことがわかります。これは、人類の移動と発見の歴史において重要な功績といえるでしょう。
アクセス
ランス・オー・メドー国立歴史公園の最寄り空港はニューファンドランド島北部にあるセント・アンソニー空港。日本からの直行便はないためトロントやモントリオールなどを経由して向かう必要がある。セント・アンソニー空港からセント・アンソニー市街地まではシャトルバスで約45分。市街地から公園への公共交通機関はないためレンタカーやタクシーを利用して訪れることになる。
執筆協力者PROFILE
國學院大学文学部史学科卒。東海大学大学院文学研究科史学専攻修士課程修了。文学修士。NPO法人世界遺産アカデミー認定講師。世界遺産検定マイスター。歴史能力検定1級。世界史、世界遺産、ビッグヒストリーに関するさまざまな書籍の執筆・翻訳・監修を手掛けてきた。
アクセス
ランス・オー・メドー国立歴史公園の最寄り空港はニューファンドランド島北部にあるセント・アンソニー空港。日本からの直行便はないためトロントやモントリオールなどを経由して向かう必要がある。セント・アンソニー空港からセント・アンソニー市街地まではシャトルバスで約45分。市街地から公園への公共交通機関はないためレンタカーやタクシーを利用して訪れることになる。
執筆協力者PROFILE
國學院大学文学部史学科卒。東海大学大学院文学研究科史学専攻修士課程修了。文学修士。NPO法人世界遺産アカデミー認定講師。世界遺産検定マイスター。歴史能力検定1級。世界史、世界遺産、ビッグヒストリーに関するさまざまな書籍の執筆・翻訳・監修を手掛けてきた。
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