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緑の台地に築かれた石造建築群
メサ・ヴェルデとは、スペイン語で「緑の台地」を意味します。アメリカ、コロラド州南西部に位置し、高所では標高2,600mを超えるこの台地は、マツなどの常緑樹に覆われています。この地には、西暦550年から1300年にかけて、先住民アナサジ族(現代のプエブロ族の祖先とされる)が居住していた住居遺跡群が残されています。最も古い居住跡は6世紀頃のもので、台地上に設けられた竪穴式住居に暮らしていました。床には小さな穴が設けられており、人間が地下世界からやってきたものとする神話を象徴しています。750〜1100年にかけて、区画が整備された集落が形成され、崖の側面の岩陰に集落が築かれるようになったと考えられています。
岩陰にたたずむ大規模な集落遺跡
代表的な集落遺跡として、クリフ・パレス、バルコニー・ハウス、スクエア・タワー・ハウスの3ヵ所が挙げられます。いずれも崖の側面の下部が浸食によって洞窟状に削られた岩陰に、砂岩と泥モルタルを用いて建設されています。最大規模のクリフ・パレスには150の部屋があり、多層階の建物が立ち並び、キヴァと呼ばれる23の半地下式の円形集会礼拝所も存在しています。かつては100人が居住していたと推定されています。バルコニー・ハウスでは、岩肌と同色の石造建築が岩陰にぴたりと収まり、まるで建物が岩に溶け込んでいるかのような印象を与えます。北東向きで日当たりが良くないものの、湧き水へのアクセスが良かったと考えられています。スクエア・タワー・ハウスは、その名の通り方形の高塔が残る住居跡で、メサ・ヴェルデで最も高い、4階建て・高さ8mの塔が存在します。
保存状態の良さと保護のための今後の課題
メサ・ヴェルデ国立公園は、1906年に議会の法令により設立され、国の法律によって保護された世界初の遺跡保存地区です。また、1978年に世界で最初に登録された12の世界遺産のひとつでもあります。遺跡の保存状態は極めて良好で、多層階建築やキヴァなどが当時の姿を保ち、遺跡全体の構造を明瞭に確認することができます。この保存の良さは、アナサジ族の高度な建築技術と、岩陰という乾燥した環境の影響によるものです。周辺の自然環境もまた往時のままに維持されています。しかし、森林火災や外来植物種の侵入、周辺地域の開発といった要因からの保護が今後の課題として挙げられています。
アクセス
アリゾナ州フェニックスからコロラド州の最寄りの町デュランゴまで飛行機で1時間25分、そこから車で約50分。
執筆協力者PROFILE
國學院大学文学部史学科卒。東海大学大学院文学研究科史学専攻修士課程修了。文学修士。NPO法人世界遺産アカデミー認定講師。世界遺産検定マイスター。歴史能力検定1級。世界史、世界遺産、ビッグヒストリーに関するさまざまな書籍の執筆・翻訳・監修を手掛けてきた。
アクセス
アリゾナ州フェニックスからコロラド州の最寄りの町デュランゴまで飛行機で1時間25分、そこから車で約50分。
執筆協力者PROFILE
國學院大学文学部史学科卒。東海大学大学院文学研究科史学専攻修士課程修了。文学修士。NPO法人世界遺産アカデミー認定講師。世界遺産検定マイスター。歴史能力検定1級。世界史、世界遺産、ビッグヒストリーに関するさまざまな書籍の執筆・翻訳・監修を手掛けてきた。
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