メテオラの修道院群
奇岩の頂に建てられた修道院で紙への祈りが捧げられてきた

遺産DATA

地域 : ヨーロッパ 保有国 : ギリシャ共和国 所在地 : Prefecture of Trikala, Region of Thessaly 分類 : 複合遺産 登録年 : 1988年 登録基準 : (i) (ii) (iv) (v) (vii) 遺産の面積 : 2.7187㎢ バッファ・ゾーン : 18.8414㎢ 座標 : N39 43 0.012 E21 37 60

about

自然の力と信仰心が融合した場

メテオラとはギリシア語で「中空に浮く」という意味であり、ギリシア中部にあるメテオラでは、奇岩群が数多くあり、その上に修道院が立っているという、世界でも類を見ない景観が見られます。この奇岩群が形成されたのは今から6,000万年前に誕生したとされ、そこから長い年月をかけて川の水が谷を削り、硬い部分だけが残った結果、このような景観が生まれました。この景観を神の地と思ったのか、古くから人々が住み着いていました。9世紀頃から、現実世界から離れて、決して住みやすいとは言えないこの場所に修道院を築き、祈りを捧げるようになるのです。修道院群があたかも空中に浮いているように見えるから、この地はメテオラと言われました。最盛期には24の修道院があり、7つの修道院が世界遺産に登録されています。

より社会から隔絶された場を求めて

現世を捨てて、孤独に神への祈りに没頭する修道士のことを「隠修士」と呼びますが、彼らの多くは東方正教会であるため、このような修行法を実践していきます。東方正教会では社会との関係を断ちきり、孤独のうちに修行することを重んじることが良いとされていたので、彼らは荒野や洞窟に住み、祈りと瞑想に没頭するのです。今では、修道院までは階段が設置されていますが、当時は梯子で昇り降りしないとたどり着けないのが普通でした。奇岩の高さは20~400mなので、落ちて命を落とす人もいたそうです。このように隠修士たちが祈りを捧げてきたメテオラですが、現在は観光地化しているため、信仰生活を乱されることを嫌い、同じ世界遺産の聖山アトスへ移りこむ隠修士も増えている模様。複合遺産として登録されている本遺産ですが、観光と信者の関係性についても深く考えさせられる物件であります。

アクセス

【メガロ・メテオロン修道院】首都アテネから鉄道で5時間、「カランバカ駅」下車。そこからメガロ・メテオロン修道院までバスで15分。

執筆協力者PROFILE

藤井 翼
藤井 翼
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

世界遺産検定初代マイスターの一人。地歴公民科の教諭として7年間大阪の公立高校で勤務。現在、世界遺産アカデミー認定講師として大学や私立中学で講義、授業を展開。また、自身のYouTubeチャンネル「翼の世界史チャンネル」で受験世界史の動画を配信。

Properties

メガロ・メテオロン修道院

メガロ・メテオロン修道院

The monastery of the transfiguration of the Savior

メテオラ最大の修道院。メタモルフォシス修道院とも言う。1338年に隠修士の聖アタナシオスらが修道院を建立した。1490年から全修道院を統轄したため、「大メテオロン」とも呼ばれた。庭に菜園があり、隠修士たちは自給自足に近い生活を送っている。
ヴァルラーム修道院

ヴァルラーム修道院

The monastery of Varlaam

14世紀に隠修士ヴァルラームの隠所があった場所に建った。創建は1517年。現在も活動しており、看護室や数々のイコンなどが残っている。また、先端部にはヴリゾニ(巻き上げ機)の塔も残る。
アギア・トリアダ修道院

アギア・トリアダ修道院

The monastery of the Holy Trinity

1476年創建。垂直に切り立った断崖の頂に立つため、1925年に140段の階段がつくられるまでは、梯子や人力のロープウェイを使用するしかたどり着けなかった。メテオラの修道院の中でも、特に世俗と隔絶した場所につくられた修道院である。
アギオス・ステファノス修道院

アギオス・ステファノス修道院

The monastery of Saint Stephan

1367年創建。1961年からは女子修道院となった。従って、女性が訪れた際は、スカーフを頭に巻かなければならない(貸出している)。付属に資料館には16~17世紀のイコンや写本などが展示されている。

遺産DATA

所在地 : Prefecture of Trikala, Region of Thessaly
分類 : 複合遺産
登録年 : 1988年
登録基準 : (i) (ii) (iv) (v) (vii)
遺産の面積 : 2.7187㎢
バッファ・ゾーン : 18.8414㎢
座標 :N39 43 0.012 E21 37 60

アクセス

【メガロ・メテオロン修道院】首都アテネから鉄道で5時間、「カランバカ駅」下車。そこからメガロ・メテオロン修道院までバスで15分。

執筆協力者PROFILE

藤井 翼
藤井 翼
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

世界遺産検定初代マイスターの一人。地歴公民科の教諭として7年間大阪の公立高校で勤務。現在、世界遺産アカデミー認定講師として大学や私立中学で講義、授業を展開。また、自身のYouTubeチャンネル「翼の世界史チャンネル」で受験世界史の動画を配信。