カディーシャ渓谷(聖なる谷)と神の杉の森(ホルシュ・アルツ・エルラブ)
カディーシャ渓谷にあるマル・リシャ修道院。旧約聖書に登場する預言者聖マリシャを祀る

遺産DATA

地域 : 西・南アジア 保有国 : レバノン共和国 分類 : 文化遺産 登録年 : 1998年 登録基準 : (iii) (iv) 遺産の面積 : 17.202㎢ 座標 : N34 15 14 E35 57 4(カディーシャ渓谷)

about

迫害から逃れるキリスト教徒を受け入れる避難所に

レバノン国旗には同国の象徴であるレバノン杉が描かれています。〝神の杉〟と言われるこの樹木の数少ない群生地がカディーシャ渓谷です。この渓谷は国を南北に貫くレバノン山脈の北側に広がっており、それは険しい岩山と崖から成る景観です。ここはまた、キリスト教が伝播していく最初期に、求道者たちが隠れ住んだ場所の一つで、それはやがてマロン派という東方典礼カトリック教会の一派の拠点になりました。また、迫害から逃れる他教派の人々の避難所としても機能するようになりました。

切り立った崖や洞窟に築かれた修道院

カディーシャ渓谷の岩肌に点在する修道院や教会、隠遁所の多くは、切り立った崖や洞窟を利用して築かれた、人が立ち入ることが簡単ではない場所にあります。それらは、修道士たちが瞑想や禁欲的な生活を何世紀にもわたって続けてきたことを示すもので、この渓谷がマロン派の中心地であったことの痕跡です。本遺産の主要な修道院の一つに聖アントニオス修道院があります。標高950mに位置するこの修道院は、歴史学者によると、4世紀初頭には隠遁者が住み着いたとされています。

レバノン杉は古代世界で最も価値ある建築材料

『ギルガメシュ叙事詩』や『旧約聖書』などでも言及されているレバノン杉は、古代世界で最も価値のある建築材料の一つでした。名前は「レバノン杉」ですが、植物学上の分類では「マツ科」に属します。エジプトのクフ王のピラミッド付近で発見された「太陽の船」やラムセス2世の棺もレバノン杉から作られました。かつてはレバノン山脈を豊かに覆っていたレバノン杉ですが、長年の伐採や戦火によって減ってしまい、今や絶滅の危機に瀕しています。現在レバノン国内に残るのは1,200本程度とされていますが、樹齢3,000年を超えるものが2本あります。

レバノン杉
標高2000m前後の高山帯に生育するレバノン杉(©pop_gino/Adobe Stock)

アクセス

ベイルートからブシャーレまではバスで2時間~3時間。ブシャーレからはタクシーで移動。

執筆協力者PROFILE

記者(フリーランス)/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

北海道出身。高校時代にAFSでタイ王国へ交換留学。その後、同志社大学へ進学し、卒業後は専門紙記者として10年働いたのち、一般メディアで編集および取材活動に従事。世界遺産検定マイスター。特に好きな分野は、一神教などの宗教・信仰関連遺産。趣味は華道。

遺産DATA

分類 : 文化遺産
登録年 : 1998年
登録基準 : (iii) (iv)
遺産の面積 : 17.202㎢
座標 :N34 15 14 E35 57 4(カディーシャ渓谷)

アクセス

ベイルートからブシャーレまではバスで2時間~3時間。ブシャーレからはタクシーで移動。

執筆協力者PROFILE

記者(フリーランス)/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

北海道出身。高校時代にAFSでタイ王国へ交換留学。その後、同志社大学へ進学し、卒業後は専門紙記者として10年働いたのち、一般メディアで編集および取材活動に従事。世界遺産検定マイスター。特に好きな分野は、一神教などの宗教・信仰関連遺産。趣味は華道。