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ローマ帝国の支配下で繁栄
シリアの首都・ダマスカスの砂漠の中央にあるオアシスの都市パルミラは、かつてナツメヤシが茂る地下水に恵まれた場所でした。「パルミラ」の名は、ギリシャ語でナツメヤシを意味する「パルマ」に由来しています。紀元前1世紀ごろから後3世紀の間、シルク・ロードの拠点として交易で栄え、129年にはローマ帝国のハドリアヌス帝から自由都市の資格を与えられました。パルミラの主神を祀るベル神殿や列柱道路、商人らを楽しませた円形劇場や浴場などが作られました。ギリシャ・ローマの西方文化とパルティア・ペルシアなどの東方文化の交差点に位置するパルミラの芸術と建築は、東西の文化と地元の伝統が融合し、独創的なスタイルを築きました。しかしローマ帝国からの独立に失敗したあと、街は破壊されました。
旅行者が廃墟となった都市を再発見
交易路の変化もあり街はさびれていましたが、17世紀以降、旅行者が廃墟となった都市を再発見し、その後の調査によって、石灰岩でつくられた広大な都市の全体像が明らかにされました。城壁内の約10㎢にはローマ建築の遺構が点在し、メインストリートの列柱道路は、幅11m、長さ1.2kmにわたって375本もの石柱を並べた壮大なものでした。街の城壁の外には、ローマの水道橋の遺跡と巨大なネクロポリスがあります。
治安悪化で2013年に危機遺産
『古代都市パルミラ』を含め、『ダマスカスの旧市街』、『アレッポの旧市街』などシリアにある6件の世界遺産は、シリアの内戦による治安の悪化を理由に、2013年にすべて危機遺産リストに記載されました。その後、古代都市パルミラは、イスラム過激派組織ISによって、パルミラの主神を祀るベル神殿、16本の石柱からなる「四面門(しめんもん)」、古代ローマ時代の円形劇場などが次々と破壊されました。ベル神殿の主要な構造物であった柱廊玄関は、奇跡的に一部の門が残っているものの、取り返しのつかないダメージを受けたのです。
アクセス
首都ダマスカスからバスで約3時間。2025年8月時点で、シリア全土に外務省から退避勧告(レベル4)が出されている。
執筆協力者PROFILE
中央大学文学部卒業。慶應義塾大学大学院修了(MBA)。元民放ニュースキャスターで、NHKに転職後、解説委員として世界遺産の価値や課題を取材・解説。学芸員、防災士の資格をもつ。文化審議会文化政策部会の委員を務めた(15〜22期)。
アクセス
首都ダマスカスからバスで約3時間。2025年8月時点で、シリア全土に外務省から退避勧告(レベル4)が出されている。
執筆協力者PROFILE
中央大学文学部卒業。慶應義塾大学大学院修了(MBA)。元民放ニュースキャスターで、NHKに転職後、解説委員として世界遺産の価値や課題を取材・解説。学芸員、防災士の資格をもつ。文化審議会文化政策部会の委員を務めた(15〜22期)。
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