隊商都市ペトラ
砂岩を削り出して築かれた隊商都市の建造物。その外観から「バラ色の都市」の異名を取る

遺産DATA

地域 : 西・南アジア 保有国 : ヨルダン・ハシェミット王国 分類 : 文化遺産 登録年 : 1985年 登録基準 : (i) (iii) (iv) 遺産の面積 : 261.71㎢ 座標 : N30 19 50.016 E35 26 36

about

キャラバン貿易によって発展したナバテア王国の首都

ヨルダン南部のペトラは紀元前2世紀にナバテア人によって築かれた隊商都市です。ナバテア王国の首都として機能し、古代ローマやアラビア半島、インドや中国との主要な交易中心地として発展しました。2世紀にローマ帝国に併合され、4~5世紀にはキリスト教関連の宗教施設も建設されました。ペトラは4世紀の大地震による被害と、交易路が変化されたことにより、1812年スイス人のイスラム学者によって再発見されるまで砂に埋もれていました。

ペトラを首都としたナバテア王国

ナバテア王国は、ナバテア人によって建国された国です。ナバテア人はもともとアラブ系の遊牧民族でした。ナバテア人がペトラ周辺地域に移住した時期については定かではありませんが、キャラバン貿易によって富を形成し、定住生活を送るようになりました。紀元前168年にナバテア王国を建国するとアレタス4世(紀元前9~紀元後40年)の治世の時に最盛期を迎えました。トラヤヌス帝の時にナバテア王国はローマ帝国に併合されましたが、ペトラはその後も都市として繁栄し、ローマ都市や建築の影響を受けるようになりました。

無形文化遺産:ペトラとワディラムのベドゥインの文化空間

ベドゥインは、ヨルダン南部のペトラとワディラム近郊の半乾燥高地と砂漠地帯に居住しています。ベドゥインは現在でもペトラ近郊の貯水池や洞窟を利用しているほか、牧畜文化や伝統医学、黒色のテントの作り方などの知識や技術を大切に守っており、口頭で伝承しています。これらベドゥインによる生活は無形文化遺産にも登録されています。ペトラでも多くのベドゥインが観光業に関わっており、週に3回ほど行われるシークから宝物殿をキャンドルで照らす夜のイベントでは、彼らの音楽を楽しむことができます。

アクセス

首都アンマンのアブダリ駅でJETTバスを利用。または、アンマン南駅から公共ミニバンに乗車。いずれも3~4時間。

執筆協力者PROFILE

角濱 さくら
角濱 さくら
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/大学生

筑波大学人文・文化学群人文学類在学。2021年度「世界遺産✕SDGsチャレンジ!」小論文部門、2022年度「世界遺産✕SDGs教員養成プログラム」で最優秀賞。現在は中央アジアを中心とする無形文化遺産の保護や活用について関心がある。

Details

シーク

シーク

Siq

ペトラの宝物殿に続く狭い自然の渓谷で古代の正門。山が自然に割れてできたもので、岩壁は水の浸食で削られて滑らかになった。距離は約1kmに及ぶ。シークの両側には街の外へ水をためるための水路が設けられている。岩肌のあちこちにナバテアの神々が刻まれている。
エル・ハズネ(宝物殿)

エル・ハズネ(宝物殿)

El Khasneh

「宝物殿」とも呼ばれる、岩壁を彫刻のように彫りぬいてつくった高さ40mの建造物。ペトラ遺跡で最も有名な建物だが、その機能は未だ分かっていない。近年の調査ではエル・ハズネの地下室から墓域が発見された。
円形劇場

円形劇場

Theatre

一枚岩をくりぬいてつくった劇場。1世紀初頭のアレタス4世の治世の時に建設された。最大6,000人を収容できる劇場で、ローマ時代には様々な文化活動が行われたと考えられる。
修道院

修道院

Deir

幅46.7m、高さ48.3mの規模を誇る、ペトラ最大の建造物のひとつ。2世紀初頭のラベル2世の治世に建設された。広間はキリスト教の礼拝堂として再利用され、後ろの壁には十字架が彫られている。

王家の墓群

Royal Tombs

王家の墓群は市街を見下ろすフブタ山の西側に建設された4つの墓群。墓群は壺の墓、シルクの墓、コリント式の墓、宮殿の墓から構成されている。建物の精巧な造りや目立つ立地から王族の墓地であると考えられる。

遺産DATA

分類 : 文化遺産
登録年 : 1985年
登録基準 : (i) (iii) (iv)
遺産の面積 : 261.71㎢
座標 :N30 19 50.016 E35 26 36

アクセス

首都アンマンのアブダリ駅でJETTバスを利用。または、アンマン南駅から公共ミニバンに乗車。いずれも3~4時間。

執筆協力者PROFILE

角濱 さくら
角濱 さくら
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/大学生

筑波大学人文・文化学群人文学類在学。2021年度「世界遺産✕SDGsチャレンジ!」小論文部門、2022年度「世界遺産✕SDGs教員養成プログラム」で最優秀賞。現在は中央アジアを中心とする無形文化遺産の保護や活用について関心がある。