ポンペイ、エルコラーノ、トッレ・アヌンツィアータの考古地区
西暦79年のヴェスヴィオ山の噴火によって、火山灰に埋もれていたポンペイ遺跡。18世紀に始まった発掘作業は現在も続けられている

遺産DATA

地域 : ヨーロッパ 保有国 : イタリア共和国 分類 : 文化遺産 登録年 : 1997年 範囲変更年 : 2023年 登録基準 : (iii) (iv) (v) 遺産の面積 : 0.9805㎢ バッファ・ゾーン : 17.2609㎢ 座標 : N40 45 0 E14 28 60

about

火山灰の下できれいに残っていた街並み

西暦79年、ナポリの東にあるヴェスヴィオ山が大噴火しました。その噴火の火砕流・土石流や火山灰で周辺の古代ローマの都市は壊滅しました。ヴェスヴィオ山の南にあったポンペイの街はそれから千年以上にわたり、火山灰と火山礫に埋もれたままでしたが、16世紀に農民が偶然発見し、18世紀半ばから本格的な発掘が始まりました。ヴェスヴィオ山のすぐ西側にあったヘルクラネウム(現エルコラーノ)も高温の火砕流に襲われた後、火山灰に埋もれました。これらの街で発掘された遺跡から、広場や公共の建築物があり、石で舗装された通りの両側に住宅や店舗が並ぶ古代ローマの街並みを知ることができます。ポンペイ近郊の町トッレ・アヌンツィアータには皇帝ネロの妻ポッパエアの別荘「オプロンティスのヴィラ」が発掘されています。

古代ローマの都市の全体像を知ることができる遺跡

ポンペイの広い敷地の中心には、フォロ(広場)があり、その近くに役所や神殿などの公共建築物が立ち、公衆浴場や劇場なども保存状態よく残されています。街の通りの両側にはいろいろな店舗が並び、飲食店の窯には炭化した食材なども残っていたと言われます。個人の住宅も室内装飾や家具などがそのままの状態で残こされていたものもあり、富裕層の邸宅では壁や床にモザイク画が施され、総じて高い文化水準の街であったと想像されます。

古代ローマの高級リゾート都市だったエルコラーノ

ナポリの南東約8kmのヘルクラネウム(現エルコラーノ)は、ポンペイに先んじて発掘が開始されましたが、20m近くの土石流と火山灰に埋もれていたため発掘の進捗は遅れました。現在では共同浴場や劇場、数々の館などが発掘されています。厚い土石流の層や適度な湿度により木や紙も腐食せずに残ったものもあり、ポンペイよりも保存状態が良いとされています。貴族の館などの構造や残されていた美しい壁画等から、高級なリゾート地だったと考えられています。

アクセス

ナポリへはローマなどを経由してナポリ中央駅から「ヴェスヴィオ周遊鉄道(Circumvesuviana)」のソレント行きでポンペイ遺跡最寄りのポンペイ・スカーヴィ駅へ行く。所要時間は約30〜40分。ポンペイ遺跡はそこからすぐ。トッレ・アヌンツィアータへもトッレ・アヌンツィアータ駅からすぐ。エルコラーノ遺跡はポンペイへの途中エルコラーノ・スカーヴィ駅が最寄り。所要時間は約20分。

執筆協力者PROFILE

細谷 正文
細谷 正文
大東文化大学・フェリス女学院大学講師/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

早稲田大学卒業。損害保険会社勤務の傍ら世界遺産を勉強し、退職後いくつかの大学にて関連講座を担当。現在は大学講師と趣味の音楽(クラシック歌手)の二刀流。

Properties

ファウヌスの家

ファウヌスの家

House of the Faun

ポンペイに紀元前2世紀後半に建てられたヘレニズム様式の邸宅の遺跡。宮殿のような大規模な邸宅で、「踊る牧神(ファウヌス)」の銅像が見つかったことからその名がついた。床を覆う豪華なモザイクが特徴で、紀元前333年の「イッソスの戦い」(アレクサンドロス大王とダレイオス3世の戦い)のモザイク画が有名。
秘儀荘

秘儀荘

Villa dei Misteri / House of the Mysteries

ポンペイ遺跡の北西に位置する、紀元前2世紀頃に建てられた別荘の遺跡。ワイン醸造を行っていた富豪の邸宅だと考えられている。「秘儀の間」には、「ポンペイの赤」と呼ばれる深紅の背景に29人の人物が等身大に描かれている。壁画は紀元前70~60年頃に制作されたと推定され、酒の神・ディオニュソスの秘儀を描写している。79年の大噴火により火山灰に埋もれたが、壁画が空気にふれず顔料の劣化が抑えられたため、当時の色彩が鮮明に残された。
パピリの館

パピリの館

Villa of the Papyri

エルコラーノにある遺跡で、建物内から大量のパピルス文書が発見されたため「パピルス荘」とも呼ばれる。文書の内容は哲学書から詩歌まで幅広く、ほとんどがギリシア語文献だが、一部にラテン語文献も含まれていた。発掘時のパピルスは、炭化により、読むどころか開くことすら困難なほど脆く黒い塊になっていたが、化学やX線などの光学技術を導入し、解読が進展している。
オプロンティスのヴィラ

オプロンティスのヴィラ

Villa Oplontis

トッレ・アヌンツィアータにある、皇帝ネロの妻ポッパエアの別荘と伝わるヴィラ。西側(ヴィラA)が皇帝と妃の部屋で、東側(ヴィラB)は使用人たちのエリアと考えられている。ヴィラAには、静物画やクジャクを描いた幻想的なフレスコ画が状態良く残されていて、古代ローマの最も重要な美術作品のひとつと言われている。

遺産DATA

分類 : 文化遺産
登録年 : 1997年
範囲変更年 : 2023年
登録基準 : (iii) (iv) (v)
遺産の面積 : 0.9805㎢
バッファ・ゾーン : 17.2609㎢
座標 :N40 45 0 E14 28 60

アクセス

ナポリへはローマなどを経由してナポリ中央駅から「ヴェスヴィオ周遊鉄道(Circumvesuviana)」のソレント行きでポンペイ遺跡最寄りのポンペイ・スカーヴィ駅へ行く。所要時間は約30〜40分。ポンペイ遺跡はそこからすぐ。トッレ・アヌンツィアータへもトッレ・アヌンツィアータ駅からすぐ。エルコラーノ遺跡はポンペイへの途中エルコラーノ・スカーヴィ駅が最寄り。所要時間は約20分。

執筆協力者PROFILE

細谷 正文
細谷 正文
大東文化大学・フェリス女学院大学講師/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

早稲田大学卒業。損害保険会社勤務の傍ら世界遺産を勉強し、退職後いくつかの大学にて関連講座を担当。現在は大学講師と趣味の音楽(クラシック歌手)の二刀流。