about
崖の上にそびえ立つカンボジアの宗教遺跡
プレア・ビヒア寺院はカンボジア北部とタイの国境に位置するカンボジア平原の大部分を占める高原の端、崖の頂上に立つ宗教遺産です。寺院からは眼下の平野を一望でき、周囲の自然地形と見事に調和しているため、この立地は寺院の方向を決める神聖な要素であったと考えられています。また寺院は霧につつまれることもあることから地元民から、寺院は楽園の一部であるとも捉えられています。「プレア・ビヒア」とはクメール語で「神聖な寺院」を意味します。
歴代のクメール王によって保護・改修が行なわれた寺院
プレア・ビヒア寺院は9世紀初頭にヒンドゥー教のシヴァ神を祀る祠堂が建てられたものを、11~12世紀にかけてクメール王朝のスーリヤヴァルマン1世と2世が大改築を行い、王家の寺院として保護されてきました。歴代のクメール王によって改修が行われてきたため、寺院には様々な建築様式の要素がみられます。シヴァ神を祀る寺院は従来東向きの長方形の設計がほとんどですが、プレア・ビヒア寺院は南北を軸に建てられています。ヒンドゥー教の聖地として栄えたプレア・ビヒア寺院ですが、ヒンドゥー教が衰えると仏教寺院として改築されました。
国境と世界遺産登録をめぐる問題
プレア・ビヒア寺院はカンボジアとタイの国境に位置します。そのため両国の間では周辺の土地の帰属をめぐる問題を抱えてきました。1962年にハーグ国際司法裁判所がプレア・ビヒア寺院一帯をカンボジア領と認定しますが、周辺の一部の土地の帰属は未確定のままでした。2008年にプレア・ビヒア寺院がカンボジアの世界遺産として登録されました。登録結果をめぐりタイが反発し、死者を出す戦闘にまで発展しました。2013年にハーグ国際司法裁判所が再び寺院一帯をカンボジア領であると認めましたが、遺跡周辺の一部の領土の帰属については判決でも明記されていません。2025年にも周辺で両国の軍事衝突が発生し、寺院への被害が報じられました。
アクセス
シェムリアップ市内から車で3~4時間。
執筆協力者PROFILE
筑波大学人文・文化学群人文学類在学。2021年度「世界遺産✕SDGsチャレンジ!」小論文部門、2022年度「世界遺産✕SDGs教員養成プログラム」で最優秀賞。現在は中央アジアを中心とする無形文化遺産の保護や活用について関心がある。
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執筆協力者PROFILE
筑波大学人文・文化学群人文学類在学。2021年度「世界遺産✕SDGsチャレンジ!」小論文部門、2022年度「世界遺産✕SDGs教員養成プログラム」で最優秀賞。現在は中央アジアを中心とする無形文化遺産の保護や活用について関心がある。
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