プエルト・リコの要塞とサン・フアン国立歴史地区

新大陸の広大なスペイン植民地の玄関口

プエルト・リコ島は、カリブ海の大アンティル諸島の最東端に位置しており、サン・フアン国立歴史地区には、スペイン統治時代の堅固な要塞と美しい町並みが残されています。16世紀初頭にスペイン人がこの地に入植して間もなく、広大な植民地が新大陸に形成され、プエルト・リコはその玄関口として機能するようになりました。スペインはこの貴重な島を250年以上かけて要塞化し、約400年にわたって精力的に防衛・支配を続けました。「豊かな港」を意味する「プエルト・リコ」の名の由来となったサン・フアン港の要塞群は、この地がいかに戦略的に重要であったかを如実に物語っています。

サン・フアン港を防衛した３つの要塞

サン・フアン港を外敵から防御するために、3つの要塞が築かれました。1530〜1540年に建設されたラ・フォルタレサ要塞は、城砦というよりも総督の住居としての性格が強く、1822年以降は正式に総督邸となり、建物も壮麗な宮殿へと改築されました。アメリカの統治下に入ってからも州知事官邸として使用され、現在も政府施設として現役です。島の西端に位置するエル・モロ要塞は16世紀に建設され、バッティスタ・アントネッリの設計を基に拡張され、1783年に完成しました。装飾を排したこの巨大な要塞は、イギリス、オランダ、そして海賊フランシス・ドレークらによる幾度もの攻撃を退け、プエルト・リコの防衛に貢献しました。エル・モロ要塞と同時期に竣工し、歴史地区の東側を守るサン・クリストバル要塞は、スペインが新大陸に築いた最大の要塞とされ、1797年のイギリス艦隊の侵攻を退けました。これら3つの要塞を結ぶ高さ15mの城壁内部が、世界遺産として登録されています。