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クローヴィス1世以降、32人の王が戴冠式を行ったランス
ランスが大きく発展したのは、496年頃にフランク王国のクローヴィス1世がこの地でキリスト教カトリックの洗礼を受けたことがきっかけです。クローヴィスはゲルマン人のフランク族を統一すると、481年にフランク王国メロヴィング朝をひらきました。彼はゲルマン人のアレマン族との戦いで、イエス・キリストが勝利に導いてくれたら洗礼を受けると天に誓います。そうして見事勝利を収めたため、王妃や約3,000人のフランク族の兵士と一緒に洗礼を受けました。このことは、カトリック教会がフランク王国という強い後ろ盾を得たことを意味しました。この時、クローヴィスに洗礼を与えたのが聖レミギウス(サン・レミ)だと伝わります。その後、1825年のシャルル10世まで32人の王がランスで戴冠式を行い、そのうち25人の王が現在のノートル・ダム大聖堂で戴冠式を行いました。
ジャンヌ・ダルクが戴冠させたシャルル7世
1339年から始まったとされる百年戦争は、フランス王家とイギリス王家の王位継承問題がきっかけでした。フランスのヴァロワ朝は、有力諸侯のフランドル公とブルゴーニュ公が反旗を翻しただけでなく、ペストの流行などもあり、劣勢にありました。そこに現れたのが、神の声を聴いたという少女ジャンヌ・ダルクです。彼女は1429年に王太子シャルルの元を訪ねて信用を得ると、数々の奇跡的な勝利を収め、イギリス軍に包囲されていた重要拠点であるオルレアンを奪還しました。そして、シャルル7世を促して正式な戴冠式をランスで実現させました。ジャンヌにとって、シャルル7世が戴冠する場所がランスであるということが重要でした。なぜなら、ランスには聖レミギウスが戴冠式でクローヴィスに塗った聖油があり、それによってシャルル7世は正統な王と認められたからです。
13世紀に建設されたゴシック建築の傑作
現在の大聖堂の地に最初の聖堂が建てられたのは401年と伝わります。ランス第11代司教であった聖ニケーズによって建立されました。その後、9世紀に大聖堂となりましたが、1210年の火災で焼失してしまいました。しかし、火災の翌年にはオーブリー・ドゥ・アンベール大司教が現在見られるゴシック様式での大聖堂再建を指示し、そこからわずか60年ほどで完成しました。美しいステンド・グラスや2,300体を超す彫像などゴシック様式が調和した大聖堂は、フランスだけでなくドイツでの大聖堂建築にも大きな影響を与えました。1914年のドイツ軍の攻撃では大きな被害を受けましたが、アメリカの実業家ジョン・ロックフェラーの協力などを得て1924から修復が行われ、1938年には現在みられる姿で再建されました。1974年にはマルク・シャガールが制作したステンド・グラスも設置されています。
アクセス
パリからランス駅までTGVで約1時間。ランス駅から大聖堂まで徒歩で約15分。
執筆協力者PROFILE
北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。
Properties
ノートル・ダム大聖堂
Cathedral of Notre-Dame
サン・レミ旧修道院
Former Abbey of Saint-Rémi
トー宮
Palace of Tau
アクセス
パリからランス駅までTGVで約1時間。ランス駅から大聖堂まで徒歩で約15分。
執筆協力者PROFILE
北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。
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