パンテオン
ファサードにはアグリッパが建てたことが記されている

美しい太陽光を取り込む天井のオクルス

パンテオンはもともと、紀元前27年にアグリッパが建設した、全ての神々を祀る「万神殿」でした。80年と110年の火災で焼失してしまいましたが、128年にハドリアヌス帝によって再建されました。ファサード(建物正面)はギリシャ神殿を思わせるような八柱式の作りですが、建物はローマン・コンクリートで作られたロトンダと呼ばれる円堂の上に、ローマ建築の特徴であるドーム天井が載っています。そしてそのドーム天井の中心には、ラテン語で「目」を意味するオクルスと呼ばれる円形の窓が開いていて、そこから美しく光りが堂内に差し込みます。

オクルス
天井のオクルスから光が差し込み、神々しい空間になっている(ⒸLuciano Mortula-LGM/AdobeStock)

ローマの神々の神殿からキリスト教の聖堂へ

392年にテオドシウス帝がキリスト教を国教化すると、多神教のローマの神々を祀る神殿の多くはキリスト教の聖堂に作り替えられました。しかしパンテオンは、東ローマ帝国皇帝が教皇に寄進していたため破壊を免れ、609年にサンタ・マリア・アド・マルティレス聖堂となりました。17世紀には2つの鐘楼が取り付けられましたが、市民からの評判が悪く「ロバの耳」と揶揄されていたこともあり、19世紀末に取り除かれました。現在もキリスト教カトリックのミサが行われ、聖霊降臨祭(ペンテコステ)の時にはオクルスからたくさんの深紅のバラの花びらが撒かれます。これは聖霊降臨祭の時に、聖霊が炎のような舌の姿で人々の上に降りてきたという聖書のエピソードを表現しています。

パンテオン
イタリアの初代国王ヴィットーリオ・エマニエーレ2世の墓もある(ⒸclemMTravel/AdobeStock)

執筆協力者PROFILE

宮澤 光
宮澤 光
NPO法人世界遺産アカデミー主任研究員

北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。

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宮澤 光
宮澤 光
NPO法人世界遺産アカデミー主任研究員

北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。