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聖ヤコブの墓と聖地巡礼
「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」は、ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステーラにある聖ヤコブの棺を目指す、キリスト教の巡礼路です。1993年に、ピレネー山脈からスペイン北部を東西に貫く巡礼路が、世界遺産に登録されました。「サンティアゴ」とは、スペイン語で、キリスト教の使徒のひとりである聖ヤコブのこと。聖ヤコブがスペインにおいて福音を説いたという伝説は、7世紀初頭には存在していました。「使徒の休む場所は、福音を説いた場所にあるべきである」という聖ヒエロニムスの教えがあることから、聖ヤコブの遺体は、殉教地のエルサレムからスペインに移送されたと信じられていました。9世紀に聖ヤコブの墓が発見されると、この報せが西ヨーロッパの各地に広がり、サンティアゴ・デ・コンポステーラはエルサレム、ヴァティカンに次ぐ聖地としてカトリック世界に定着していきました。
王侯貴族も通った文化交流と情報網の道
1993年に登録された道は、フランス人が多く巡礼した道として「カミノ・フランセス(フランス人の道)」と呼ばれ、2015年に北部の海沿いの「原初の道」と「内陸バスクの道」、「リエバナの道」が「スペイン北部の道」として拡大登録されました。これらの巡礼路はナバーラ王国の古都パンプローナ、レオン王国の都レオン、大聖堂が世界遺産に単体で登録されているブルゴスなどの主要都市を通過し、その道沿いには巡礼者のための病院や安宿、聖堂、教会、橋などが残ります。世界遺産には、道に加えてこれらの建造物群も構成成資産に含まれています。フランスからスペインへ続く巡礼路は、巡礼者だけでなく商人や職人、騎士、さらには王侯貴族なども行き交い、文化交流と情報網の役割も果たしました。沿道や都市ではホタテ貝の印を見ることができますが、これはイエス・キリストと出会った時に漁師であった聖ヤコブを表すシンボルです。サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路と巡礼都市からは、中世の西ヨーロッパにおけるカトリックの求心力と、信仰心に基づく巡礼の歴史を知ることができます。
「道の遺産」同士のつながり
この遺産は世界遺産の中でも珍しい「道の遺産」です。同じく巡礼道としての歴史をもつ熊野古道のある和歌山県は、1998年にガリシア州と「姉妹道」提携を結びました。熊野古道は2004年に『紀伊山地の霊場と参詣道』として世界遺産に登録されており、自治体間では交流事業が行われています。さらに、サンティアゴ・デ・コンポステーラでは「最後の100km以上を徒歩もしくは馬で巡礼する」、熊野古道では「熊野那智大社と熊野本宮大社間を徒歩で巡礼する」など、所定の条件を満たした上で両道を踏破すると、「二つの道の巡礼者」として登録することができます。
執筆協力者PROFILE
広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。
執筆協力者PROFILE
広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。
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