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1万年以上守られたブナ林の奇跡
白神山地は、約1万年前から北日本に広がっていたブナ林の貴重な姿を今に伝える場所で、手つかずの森が広く残されています。この地域は多雪の気候により独特の植物群が育まれ、ニホンカモシカやツキノワグマ、クマゲラなどの動物も多く生息しています。ブナ林を中心に、多様な生きものたちがつながりあい、豊かな生態系を支えています。自然のたくましさと繊細なバランスが共存する白神山地は、気候変動や人間の影響で自然が危機にさらされる現代において、地球が長い時間をかけて育んだ奇跡のような場所です。
白神山地は海の底だった?驚きの地質史
現在の白神山地がある場所は、数百万年前まで日本海の海底でした。約9000万年前の花崗岩を土台に、火山活動によってできた堆積岩などが重なり、500万〜400万年前の地殻変動によって地表に隆起しました。今もなお、年間約1.2mmという国内最速のスピードで隆起が続いており、崩れやすく地滑りが多いという特徴もあります。私たちが見ている山や森の形は、地球が動き続けている証拠であり、まさに現在進行形の地形ということに驚かされます。また、山々の間を流れる大川、赤石川などの河川は、地形を削りながら独特の谷をつくり、その流域を囲むように白神岳(1,235m)や向白神岳(1,250m)、二ツ森(1,086m)など1,000m級の山々が連なっています。このような山と谷の地形が、多様な気候や生態系を生み出しています。
氷河期を乗り越えた豊かな植物多様性
かつて地球が温暖だった時代、ブナ林は北極圏周辺に広く分布していました。白神山地の森は、その古代のブナ林の生き残りといえます。氷河期には多くの植物が寒冷化を避けて南下しましたが、ヨーロッパなどでは東西に伸びる山脈が移動の障壁となり、一部の植物しか南下できず、結果としてブナが優占する単純な植生に変化しました。一方、日本では氷河期に入っても山脈が南下を妨げなかったため、アオモリマンテマやツガルミセバヤといった氷河期の遺存種を含む多様な植物が今も共存しています。白神山地のブナ林は、数千万年前の北極圏の森に近い姿をとどめており、命のつながりや地球の歴史を映し出す貴重な場所です。
アクセス
新青森駅から弘前駅まで電車で約50分、弘前駅から白神山地ビジターセンターまでバスで約30分。
執筆協力者PROFILE
世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。
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新青森駅から弘前駅まで電車で約50分、弘前駅から白神山地ビジターセンターまでバスで約30分。
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世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。
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