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海と陸がつながる知床の歴史
知床は、北海道の北東部、オホーツク海南端に位置しており、海と陸の生態系が密接に関わり合う稀有な地域です。季節海氷の影響を強く受ける場所でありながら、陸上にも原生的な自然が色濃く残っています。この地域は、サハリンから渡来した寒冷地の動物と、本州から移動してきた温暖地の動物が同じ環境に暮らしており、非常に高い生物多様性を誇ります。また、人の手がほとんど加えられていない自然が残っていることから、かつて北海道全域に生息していた陸上の哺乳類や鳥類の多くが、現在もこの地に息づいています。
海氷がもたらす命の連鎖
知床沿岸は、北半球で最も低緯度で形成される季節海氷域として知られています。冬季に海面を覆う氷の下では、アイスアルジー(海氷藻)と呼ばれる微細な植物がゆっくりと成長し、春に氷が解けて日光が届くと、植物プランクトンが一斉に増殖を始めます。この植物プランクトンを起点に、オキアミや魚類、海鳥、さらにはクジラやシャチといった大型海洋哺乳類へとつながる豊かな食物連鎖が展開されます。特に、サクラマス、シロザケ、カラフトマスといったサケ科の魚類は、海と川を行き来しながら生態系の物質循環に重要な役割を果たしています。これらの魚が育ち、産卵で川に戻った後はヒグマやシマフクロウなど陸上の生物の命を支えることにもつながっています。
知床に息づく希少な動植物
知床の複雑な地形と気候は、原生的な植生の豊かな残存を可能にしており、絶滅危惧種や固有種を含む多様な生物が生息しています。ヒグマの個体密度は世界有数であり、自然界の頂点に立つ大型哺乳類が今なお暮らす、きわめて貴重な環境です。沿岸の海には、季節ごとにトドやゴマフアザラシ、シャチ、ミンククジラなどの海洋哺乳類も訪れます。鳥類では、天然記念物に指定されているクマゲラ、オオワシ、オジロワシ、シマフクロウの4種がこの地域で確認されています。
アクセス
女満別空港から車やバスで約2時間15分。
執筆協力者PROFILE
世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。
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女満別空港から車やバスで約2時間15分。
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世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。
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