シルク・ロード:長安から天山回廊の交易網
ユーラシア大陸の東西をつないできた交易路シルク・ロードの一部にあたる5,000kmが登録された

遺産DATA

地域 : 西・南アジア, 東・東南アジア 保有国 : カザフスタン共和国, キルギス共和国, 中華人民共和国 分類 : 文化遺産 登録年 : 2014年 登録基準 : (ii) (iii) (v) (vi) 遺産の面積 : 426.6816㎢ バッファ・ゾーン : 1899.631㎢ 座標 : N34 18 16 E108 51 26

about

東西交流を促進させた道

『シルク・ロード:長安から天山回廊の交易網』は、漢と唐の首都であった長安と洛陽から、中央アジアのカザフスタンとキルギスに至る、シルク・ロードの一部約5,000kmが登録されています。紀元前2世紀から紀元後1世紀にかけて形成されたこの交易路は、東西の複数の文明を結びつけ貿易や宗教、科学、技術、芸術など様々な文化交流を促進させ、16世紀まで利用されました。シルク・ロードでは都市から都市へとキャラバンが物資を運んで、そこから別のキャラバンが次の都市へ運ぶ中継交易が行われたため、東西の文化が互いに交流し広がっていきました。

シルク・ロードの3つのルート

シルク・ロードは大きく3つのルートがありました。最も古いルートは「草原の道」と呼ばれ、東欧のあたりから中央アジア北部やモンゴルの草原地帯を通って中国に至る道です。2つめは「オアシスの道」と呼ばれるルートで、現在のトルコのあたりからウズベキスタンのサマルカンドや天山山脈を越えて中国に至る道です。3つ目は「海の道」と呼ばれるルートで、中国南部の港からインドやアラビア半島へ至る海上の航路です。今回登録されたルートは2つ目の「オアシスの道」の一部で、19世紀のドイツの地理学者フェルディナント・フォン・リヒトホーフェンが名付けた「シルク・ロード」もこの「オアシスの道」のルートを指しています。

仏教文化とシルク・ロード

西の庫車(クチャ)から東の洛陽まで続く一連の仏塔と石窟寺院は、インドから東方へ仏教文化が伝わり、広まったことを示しています。この道は7世紀の唐の僧侶で『大唐西域記』の著者である玄奘が、経典の原典を求めてインドへ赴く際に通った道でもあります。彼の著書の中にはシルク・ロード上の国や都市の記述があります。また玄奘の遺骨が納められた興教寺塔や玄奘がインドから持ち帰った経典を納めた大雁塔も構成資産に含まれます。シルク・ロードは仏教の他にもゾロアスター教やマニ教、ネストリウス派キリスト教、イスラム教の東方伝播においても重要な役割を果たしました。

アクセス

執筆協力者PROFILE

角濱 さくら
角濱 さくら
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/大学生

筑波大学人文・文化学群人文学類在学。2021年度「世界遺産✕SDGsチャレンジ!」小論文部門、2022年度「世界遺産✕SDGs教員養成プログラム」で最優秀賞。現在は中央アジアを中心とする無形文化遺産の保護や活用について関心がある。

Properties

漢魏洛陽故城遺跡

漢魏洛陽故城遺跡

Luoyang City Site

現在の河南省洛陽市にある「漢魏洛陽城」は、シルク・ロードの東側の出発点であった都。後漢の時代の城は10㎢であったが、北魏の時代に拡張され80㎢になった。代表的なものは北魏時代の内城と宮殿跡。
張騫墓

張騫墓

Zhang Qian Tomb

陝西省漢中市にある、シルク・ロードの開拓者といわれる張騫の墓。張騫は前漢の武帝時代に外交使節団として西域に派遣された人物で、政治的な交渉は失敗したものの、西域の情報がそれによってもたらされた。彼の墓は紀元前114年に建設され、1939年の発掘調査で張騫の墓であると判明した。
キジル石窟

キジル石窟

Kizil Cave Temple

新疆ウイグル自治区に位置し、西域に現存する仏教石窟遺跡の中で最古かつ最大規模の石窟遺跡で、シルク・ロード沿いの最も重要な仏教遺跡のひとつ。3~9世紀にかけて築かれた石窟があり、壁画や彫刻が存在する。

スイアブ(アク・ベシム遺跡)

Suyab / Ak-Beshim

キルギス北部に位置する中央アジアを代表する遺跡。5~11世紀の交易都市でソグド人が建設したとされる。唐の西方進出の拠点として「砕葉鎮城」が建設された。また玄奘がこの地を訪れている他、詩人の李白の生誕地との説もある。
コストベ

コストベ

Kostobe

カザフスタンに位置するコストベはタラス川右岸のサリケメル村の東に位置する。重要な文化、商業、産業の中心地であった。文献からはこの集落の起源はソグド人の移住と考えられ、アク・ベシム遺跡などの他都市と類似した特徴がある。

遺産DATA

分類 : 文化遺産
登録年 : 2014年
登録基準 : (ii) (iii) (v) (vi)
遺産の面積 : 426.6816㎢
バッファ・ゾーン : 1899.631㎢
座標 :N34 18 16 E108 51 26

アクセス

執筆協力者PROFILE

角濱 さくら
角濱 さくら
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/大学生

筑波大学人文・文化学群人文学類在学。2021年度「世界遺産✕SDGsチャレンジ!」小論文部門、2022年度「世界遺産✕SDGs教員養成プログラム」で最優秀賞。現在は中央アジアを中心とする無形文化遺産の保護や活用について関心がある。