about
伝道の旅に出た修道士の庵
スイス北東部にあるザンクト・ガレンの修道院は、ローマをめざして伝道の旅に出たアイルランドの修道士ガルスが、ボーデン湖の南の谷で神の啓示を受けて612年に小さな庵を結び、そこで弟子たちとともに神への祈りを捧げる生活を送ったのが始まりでした。720年頃にその場所に修道院が創建されると、彼の名をとってザンクト・ガレン修道院と名づけ、747年にベネディクト会の修道院となってからは、学問と労働を重んじるその教えにより大きく発展し、9〜10世紀頃には、ヨーロッパにおける学術の中心地として全ヨーロッパに名を馳せました。
発展した町のシンボルとなった司教座聖堂
修道士たちの自給自足のなかで培われた繊維、織物や酪農、畜産の技術が街に還元されて地場産業となり、街自体も大きく発展しました。この地方は、修道院の名からザンクト・ガレンと呼ぶ地名になりました。その後、修道院自体は火災による焼失や宗教改革時の騒乱による破壊にあいましたが、18世紀半ばに現在見られるバロック様式で再建されました。1805年に修道院は閉鎖となりましたが、聖堂は司教座大聖堂として使われ、街のシンボルとなっています。
学術の修道院にある「魂の病院」
18世紀半ばに修道院が再建されると同時に、付属図書館も再建されました。この図書館は、印刷技術が発明される前の8〜12世紀の写本類を2,000冊以上を含む、16万冊の蔵書を誇ります。特にカロリング朝時代の修道院配置図は、現存する唯一の写本で、ベネディクト会の修道院組織の概念を示すものとして大変貴重な史料です。図書館の入り口には「魂の病院」と書かれています。中世では、知識や教養のないことは心の病とされ、図書館はそれを直す病院と考えられました。さらに建築上の価値としては、図書館内部の大広間は、スイス・ロココ様式の最高傑作とされています。
アクセス
スイス国鉄で、チューリッヒ中央駅からザンクト・ガレンまで約1時間。ザンクト・ガレン駅は旧市街の西はずれにあり、中心部(修道院近辺)までは徒歩10分。
執筆協力者PROFILE
米国総合化学会社の日本法人にて海外人事部門などで40年間勤務した後、筑波大学大学院人間総合科学研究科世界文化遺産学専攻の博士課程を修了。博士(世界遺産学)。日本造園学会会員。日本シルク学会会員。元大東文化大学国際関係学部非常勤講師。
アクセス
スイス国鉄で、チューリッヒ中央駅からザンクト・ガレンまで約1時間。ザンクト・ガレン駅は旧市街の西はずれにあり、中心部(修道院近辺)までは徒歩10分。
執筆協力者PROFILE
米国総合化学会社の日本法人にて海外人事部門などで40年間勤務した後、筑波大学大学院人間総合科学研究科世界文化遺産学専攻の博士課程を修了。博士(世界遺産学)。日本造園学会会員。日本シルク学会会員。元大東文化大学国際関係学部非常勤講師。
Similar Heritage
特徴が似た遺産を探す