スコータイと周辺の歴史地区

スコータイ王国の誕生と繁栄の歴史

スコータイは、タイ族がクメール族に代わって築いた初代スコータイ王朝の都で、13世紀から15世紀にかけて繁栄しました。特に、スコータイ王朝第3代ラームカムヘーン王の時代に最盛期を迎え、タイ文字を創り出したほか、上部座部仏教を受容して数多くの仏教寺院が建てられました。最大の寺院はワット・マハータートで、初代王インタラティットによって建てられたと言われています。こうしたスコータイ王朝の繁栄は、後のタイという国の形成にも大きな影響を与えることになります。いわゆるタイ文化の基礎を築いた都市であり、当時の宗教や社会、経済の発展を今に伝えています。

３つの古代都市の機能とつながり

『スコータイと周辺の歴史地区』はスコータイ、シーサッチャナライ、カムペンペットの3つの都市で構成されています。それぞれ異なる機能を担いながらも、共通の政治や言語、文化を有していました。スコータイは政治と行政の中心として栄え、シーサッチャナライは宗教的な拠点として栄え、陶器産業も盛んでした。カムペンペットは王国の南の国境に位置しており、外部からの侵攻を防ぐ防御機能を備えていました。3つの都市では、スリランカやクメールなどの影響を受けた独自の仏教建築が見られ、それらは「スコータイ様式」と呼ばれています。これらの都市が重要な役割を果たしながらも結束し、1つの王国を形成していたのです。

洗練された水利システムと革新的な都市設計

3つの都市は、共通する水利工学に基づいて形成されており、堤防や貯水池、運河を巧みに設計し、農業、経済、さらには生活の水源として活用する技術がありました。これらの水利システムは、都市の繁栄を支える基盤となり、スコータイ王国の都市計画における傑出した特徴になります。このような都市の一体性は、考古学的発掘によって発見された、タイ文字が刻まれた最古の石碑などから判明しています。