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紀元前3世紀のトラキア人の墳墓
ブルガリア北東部、スヴェシュタリ村近郊で1982年に発見されたこの古墳は、紀元前3世紀ごろに築かれたトラキア人の王墓です。直径約70m、高さ11.5mの墳丘の内部は、ドロモス(通路)と3つの玄室で構成されており、トラキアの祭祀建築の基本的な構造原理を示しています。古墳は現在「スボリャノヴォ」と呼ばれる考古学保護区の一角に位置しており、周囲には40基以上のトラキア人の墳墓や複数の聖域、古代および中世の集落跡、要塞、霊廟、オスマン帝国時代のミナレットなど、多数の遺構が存在します。こうした構成は、カザンラクのトラキア人墳墓のようなクーポラをもつ墳墓とは異なり、マケドニアや小アジア、エジプトなどで確認されるヘレニズム期の建築モデルと共通しています。
多色のカリアティードと壁画の芸術
スヴェシュタリの古墳は、他に類を見ない建築装飾が特徴です。中央の玄室の壁面には、10体のカリアティード(半人半植物の女性像の柱)が高浮き彫りで刻まれています。また、ルネット(ヴォールトのアーチと壁面の間にできる半円形の空間)に残る彩色壁画には、馬にまたがる死者が、永遠の命の象徴である月桂冠を差し出す女神などがフレスコで描かれており、被葬者の英雄化を表現しています。黄土色、茶色、青、赤、紫といった彩色が現在まで保存されている点も特筆されます。
ゲタイ人の文化とヘレニズム世界の接触を示す証
スヴェシュタリのトラキア人の古墳は、ゲタイ人と呼ばれるトラキア系集団の文化を伝える、きわめて重要な証言でもあります。古代の地理学者によれば、ゲタイ人は現在のスタラ・プラニナ山脈(バルカン山脈)の北側に居住し、ギリシャ世界と接触していたとされています。本古墳に見られる建築や装飾は、ヘレニズム文化の影響を受けながらも、地域固有の表現を保持し、独自に展開した地方芸術の姿を示しています。石造彫刻や壁画の保存状態は良好で、空間構成もほぼ当初のまま保たれており、高い真正性が維持されています。
アクセス
首都ソフィアから車で約5〜6時間。公共交通が少ないためレンタカーまたはツアー利用が一般的。
執筆協力者PROFILE
福島県出身。世界遺産や絶景、離島などを求め、国内に留まらず70カ国以上を旅するほどの旅好き。普段は上場企業の会社員として働きながらトラベルライターや小笠原諸島のアンバサダーなど、世界遺産や旅を軸に多岐にわたり活動を行っている。
アクセス
首都ソフィアから車で約5〜6時間。公共交通が少ないためレンタカーまたはツアー利用が一般的。
執筆協力者PROFILE
福島県出身。世界遺産や絶景、離島などを求め、国内に留まらず70カ国以上を旅するほどの旅好き。普段は上場企業の会社員として働きながらトラベルライターや小笠原諸島のアンバサダーなど、世界遺産や旅を軸に多岐にわたり活動を行っている。
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