イラク南部のアフワル:生物多様性の保護地域とメソポタミアの都市の残存景観
湿地に多く生えるアシは、建材などさまざまに利用された

遺産DATA

地域 : 西・南アジア 保有国 : イラク共和国 所在地 : Governorates of Al Muthanna, Dhi Qar, Maysan and Al Basrah 分類 : 複合遺産 登録年 : 2016年 登録基準 : (iii) (v) (ix) (x) 遺産の面積 : 2115.44㎢ バッファ・ゾーン : 2093.21㎢ 座標 : N31 33 44 E47 39 28

about

世界最大の内陸デルタ地帯

紀元前5000年から前3000一帯の海水面は現在の海岸線よりも200㎞内側にあり、湿地帯はさらに内陸に広がっていました。前4000~前3000年にかけて、ティグリス川とユーフラテス川が合流するデルタ地帯周辺に、ウルク、ウル、エリドゥといったシュメール都市が発展しました。前2000年以降、2本の川は分岐して海岸線は南東に後退を始め、気候の乾燥化が進んで湿地が干上がると、メソポタミア南部の諸都市は衰退しました。一方で、川の下流では新たな沼地が形成され、現在見られるアフワルの湿地はこの時期に形成されたものと考えられています。イラク南部の極度に高温乾燥している環境下で湿原は多くの生物の生息地であり、かつ生物多様性が見られる重要な場所となっており、水鳥たちの保護を目的としたラムサール条約にも登録されています。また、2つの川の沼沢デルタ地域には、ウルクやウルといったシュメールの都市遺跡があり、紀元前4000年に遡る建造物や遺物が残る考古学的に重要なエリアとなっています。イラク南部の4つの湿原と3つの考古遺跡を含むエリアが複合遺産として登録されています。 

「湿原のアラブ人(マアダーン)」

この湿原には9世紀以降アラブ人が住み着き、葦で作った家や水上ボートでの移動など湿原に適応した生活を営んできました。彼らは「湿原のアラブ人(マアダーン)」と呼ばれていますが、一説には先住民のシュメール人の末裔ともいわれます。彼らの衣食住は実際、古代文明期の名残を感じさせるもので、湿地帯に村落を作って生活しています。しかし近年、異常な気温上昇や渇水により、この伝統的生活様式が維持できなくなりつつあり、問題となっています。

アクセス

外務省の海外安全情報でこの地域にはレベル3の「渡航中止勧告」が出ている。

執筆協力者PROFILE

細谷 正文
細谷 正文
大東文化大学・フェリス女学院大学講師/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

早稲田大学卒業。損害保険会社勤務の傍ら世界遺産を勉強し、退職後いくつかの大学にて関連講座を担当。現在は大学講師と趣味の音楽(クラシック歌手)の二刀流。

遺産DATA

保有国 : イラク共和国
所在地 : Governorates of Al Muthanna, Dhi Qar, Maysan and Al Basrah
分類 : 複合遺産
登録年 : 2016年
登録基準 : (iii) (v) (ix) (x)
遺産の面積 : 2115.44㎢
バッファ・ゾーン : 2093.21㎢
座標 :N31 33 44 E47 39 28

アクセス

外務省の海外安全情報でこの地域にはレベル3の「渡航中止勧告」が出ている。

執筆協力者PROFILE

細谷 正文
細谷 正文
大東文化大学・フェリス女学院大学講師/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

早稲田大学卒業。損害保険会社勤務の傍ら世界遺産を勉強し、退職後いくつかの大学にて関連講座を担当。現在は大学講師と趣味の音楽(クラシック歌手)の二刀流。