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中国初の皇帝と巨大陵墓
中国・陝西省西安近郊にある始皇帝陵は、紀元前3世紀に中国を初めて統一した秦の始皇帝の墓です。陵墓は高さ約51mの角錘台型の墳丘を中心に、東西 580m、南北1,355mの内城と、東西940m、南北2,165m の外城の二重の城壁で囲まれています。建設は即位直後の紀元前246年に始まり、死去までの数十年をかけて築かれました。『史記』によれば、全国から数十万人もの労働者が動員され、地下には壮大な「都市」が造られたと伝えられます。陵墓のある一帯は兵馬俑坑などを含めると約56㎢におよび、その規模と設計は古代中国の中央集権体制と権力を象徴するものとして、後世に大きな影響を与えました。
兵馬俑に宿るリアルな兵士たち
始皇帝陵の東1.5kmにある兵馬俑坑は、1974年の発見以来、世界的に重要な考古学的発見とされています。最初に発見された兵馬俑1号坑は東西230m、南北62m、深さは4.5~6.5mあり、1.4万㎡の面積に約6,000体の俑と大量の青銅器が埋もれていました。これまでに3号坑まで発掘が進んでおり、いずれの坑からも等身大の兵士や馬、青銅製の戦車、さまざまな武器が出土しています。人物像は髪型や表情、甲冑にいたるまで細部が異なり、秦の軍事制度や職人技術を伝える貴重な資料です。兵馬俑は、当時の軍事力と権威を象徴するとともに、古代中国の造形芸術の水準の高さを示しています。
帝都の設計を映す墓
始皇帝陵の構造は、当時の首都・咸陽(かんよう)の都市計画に倣って設計されたと考えられています。陵墓は、宮殿を模した中心部を城壁で囲み、その外側にもさらに城壁が設けられるなど、地上の都を地下に再現するかのような構造を持っています。この配置は、統一国家「秦」を築いた始皇帝の中央集権的な思想や、制度の整備を象徴的に示しているとされています。また、兵馬俑の部隊が東を向いて配置されていることは、防衛の備えを意識したものであり、国家の権威と秩序を視覚的に伝えるものです。つまり単なる墓ではなく、当時の国家体制や権力構造を反映した壮大な地下建造物なのです。
アクセス
西安市内から兵馬俑博物館までバスで約1時間。兵馬俑博物館からシャトルバスで始皇帝陵まで約10分。
執筆協力者PROFILE
世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。
アクセス
西安市内から兵馬俑博物館までバスで約1時間。兵馬俑博物館からシャトルバスで始皇帝陵まで約10分。
執筆協力者PROFILE
世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。
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