ペルシアの隊商宿
イラン北東部、トルクメニスタンとの国境付近に位置する隊商宿ロバート・エ・シャラフ

遺産DATA

地域 : 西・南アジア 保有国 : イラン・イスラム共和国 分類 : 文化遺産 登録年 : 2023年 登録基準 : (ii) (iii) 遺産の面積 : 0.2777㎢ バッファ・ゾーン : 32.8332㎢ 座標 : N35 3 30.07 E51 25 12.5

about

交易ルートを往来する人々が立ち寄った「道の駅」

隊商宿(キャラバンサライ)とは、古代の街道沿いに存在した、隊商(キャラバン)のための宿泊施設のことです。その起源は、アケメネス朝ペルシア時代に「王の道」として整備された道路網に沿って設けられた中継施設といわれています。その後、シルク・ロードや巡礼路の道沿いにこのような施設が大小さまざま無数につくられ、19世紀末のカージャール朝の時代まで続きました。隊商宿では水や食料が提供され、安全に休むことができたほか、民族や言語が異なる商人たちの交流の場としても機能していました。砂漠や荒野をひたすら歩いて移動していた人々にとって、これらの隊商宿は生きていくために必要な施設でした。世界遺産には、イランに点在する54件の隊商宿が登録されています。

立地に合わせた構造の違い

各地の隊商宿は立地や気候に合わせて、さまざまな構造をしています。立地で見ると都市型と都市外型に分けることができます。前者は商業地に隣接しており、土地代の高さから空間を効率的に利用するために2階建てが多い点が特徴です。後者は安全上の懸念や、周囲に都市や村落がない場合でも機能できるように設計されており、1階建てで広い中庭をもつ構造が主流でした。地形によって隊商宿の設置間隔は異なり、平野部では35km間隔、道の傾斜が厳しい山岳地帯では10〜20kmと狭まりました。

気候風土による構造の違い

気候の観点からはいくつかのパターンに分類できます。例えば、山岳地帯や寒冷地では中庭がなく、大広間で宿泊する形式が一般的でした。砂漠地帯では、2面ないし4面にイーワーンをもつ中庭を中心に、部屋を中庭よりも高い位置に設けることで、泥や砂塵を防ぐための工夫が施されました。また、高温多湿なペルシャ湾周辺では、風通しと日陰を重視して設計され、中庭のない十字型構造が採用されました。これらの設計は、旅人の安全と快適性を最大限に考慮したものでした。

アクセス

イラン中央部のヤズドとイスファハンの間にある約400年前のキャラバンサライが有名。 ヤズドへはシーラーズ国際空港からバスで約7時間。

執筆協力者PROFILE

細谷 正文
細谷 正文
大東文化大学・フェリス女学院大学講師/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

早稲田大学卒業。損害保険会社勤務の傍ら世界遺産を勉強し、退職後いくつかの大学にて関連講座を担当。現在は大学講師と趣味の音楽(クラシック歌手)の二刀流。

遺産DATA

分類 : 文化遺産
登録年 : 2023年
登録基準 : (ii) (iii)
遺産の面積 : 0.2777㎢
バッファ・ゾーン : 32.8332㎢
座標 :N35 3 30.07 E51 25 12.5

アクセス

イラン中央部のヤズドとイスファハンの間にある約400年前のキャラバンサライが有名。 ヤズドへはシーラーズ国際空港からバスで約7時間。

執筆協力者PROFILE

細谷 正文
細谷 正文
大東文化大学・フェリス女学院大学講師/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

早稲田大学卒業。損害保険会社勤務の傍ら世界遺産を勉強し、退職後いくつかの大学にて関連講座を担当。現在は大学講師と趣味の音楽(クラシック歌手)の二刀流。