ティカル国立公園
マヤ文明最大級の神殿都市遺跡が残されている

遺産DATA

地域 : 中米・カリブ海 保有国 : グアテマラ共和国 所在地 : Department of El Peten 分類 : 複合遺産 登録年 : 1979年 登録基準 : (i) (iii) (iv) (ix) (x) 遺産の面積 : 576㎢ 座標 : N17 13 0 W89 37 0

about

当初はローマ遺跡に間違えられた

グアテマラの北部の密林にあるティカル国立公園には、ユカタン半島で興ったマヤ文明の最大級の都市遺跡が残っています。1696年にスペイン人によって発見されたこの都市は、当時ローマ帝国の遺跡と間違えられた程。また、マヤ文字が解読されていなかったので詳しいことはわかりませんでした。ところが19世紀半ばのアメリカの外交官、ジョン・ロイド・ステファンズの徹底的な調査の結果、これらはローマ帝国の遺跡ではなく、先住民の祖先が築いたものだということがわかり始めました。さらに1950年代後半にマヤ文字の解読が進むと、強大な権力をもつ王のもと、周辺国家と戦争や政略結婚を繰り返し、交易で繁栄した都市国家であったということが判明しました。少なくとも33人の王がいたとされ、王の遺体なども発見されています。

壮大な大都市の面影

ティカルの最盛期は7世紀からの約250年間であり、120㎢という広大な範囲になんと6万2,000人も暮らしていたと言われています。人口が増加すると、食料生産量も次第に増えるため、灌漑農業が発達しました。また、それに伴い天文学や暦、文字、高度な石造技術が発達しました。しかし、ティカルは他のマヤ都市と同様に滅亡していきます。滅亡理由は自然災害や疫病、戦争とも言われていますが、はっきりとしたことはわかっていません。「石碑11」には西暦869年に相当する日付が刻まれているのですが、これ以降の記録は残っていません。謎が多いティカルですが、周辺の自然も評価され、現在は複合遺産として保存されています。

アクセス

首都グアテマラ・シティから飛行機でフローレスまで1時間、そこから車で約90分。

執筆協力者PROFILE

藤井 翼
藤井 翼
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

世界遺産検定初代マイスターの一人。地歴公民科の教諭として7年間大阪の公立高校で勤務。現在、世界遺産アカデミー認定講師として大学や私立中学で講義、授業を展開。また、自身のYouTubeチャンネル「翼の世界史チャンネル」で受験世界史の動画を配信。

Details

1号神殿

Templo I, Templo del Gran Jaguar

8世紀初頭に建設された神殿であり、頂上の入り口にジャガーの彫刻があったことから「大ジャガーの神殿」とも呼ばれる。また、この神殿の地下にはア・カカウ王の遺体が埋葬されていた。

2号神殿

Templo II, Templo de las Máscaras

中央広場の西側にたつ、高さ42mの神殿。1号神殿と同時代の8世紀初頭に建設された。屋根飾りに施された浮き彫りから「仮面の神殿」とも呼ばれる。

北のアクロポリス

Acrópolis del Norte

アクロポリスとは建築物の複合体のことであり、16の神殿の下に100近い建物が埋もれている。地下で発見された雨の神「チャック像」や王の姿を描いた数多くの石碑が残るが、風化が激しい。

中央のアクロポリス

Central Acropolis

大小6つの中庭を囲んで、宮殿、邸宅、球戯場などの42棟の石造建築物が立ち並ぶ。内部が漆喰で塗られた建物は2~3階建てもあり、主に支配者層の住居と考えられている。

遺産DATA

所在地 : Department of El Peten
分類 : 複合遺産
登録年 : 1979年
登録基準 : (i) (iii) (iv) (ix) (x)
遺産の面積 : 576㎢
座標 :N17 13 0 W89 37 0

アクセス

首都グアテマラ・シティから飛行機でフローレスまで1時間、そこから車で約90分。

執筆協力者PROFILE

藤井 翼
藤井 翼
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

世界遺産検定初代マイスターの一人。地歴公民科の教諭として7年間大阪の公立高校で勤務。現在、世界遺産アカデミー認定講師として大学や私立中学で講義、授業を展開。また、自身のYouTubeチャンネル「翼の世界史チャンネル」で受験世界史の動画を配信。