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「歴史都市トレド」の歩み
トレドは首都マドリードから南に70kmの場所に位置する古都として有名です。三方をタホ川が取り囲む小高い丘の上に築かれた都市は、三大宗教の共存が息づく比類のない景観を今も保っています。伝承には、「方舟伝説」で知られるノアの末裔によって築かれたと伝わっています。ローマ帝国の支配下に置かれ、西ゴート王国時代は首都となり、711年からはイスラム勢力の統治下に置かれました。その後、レコンキスタによってキリスト教徒の手に戻るとカスティーリャ王国の王都となりました。当時トレドでは、キリスト、イスラム、ユダヤ教の信者が宗派を問わず暮らしていました。しかし、1492年のレコンキスタ完了後、キリスト教徒による迫害が始まると、イスラム教徒は去っていきました。街には、イスラム色の強い建物や、ユダヤ教徒の装飾品の数々が残り続け、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の三大宗教の要素が共存する特有の街並が今日のトレドに残されています。
多様な建築様式に出会える歴史深い街
現存するイスラム建築として代表的なのが、バブ・アル・マルデゥム・モスクです。999年に完成したレンガ造りの古代ペルシア建築で、後にロマネスク様式の要素が加わった教会へ改修されました。また、13世紀建造のユダヤ教礼拝所兼学校であるシナゴーグは内部がムデハル様式で飾られており、現在はキリスト教会となっています。そしてキリスト教建築として代表的なのがトレド大聖堂です。ゴシック様式の大聖堂でありながら中央礼拝堂の彫刻装飾「トランスパレンテ」はスペイン・バロックの傑作と称されています。1561年、時の国王フェリペ2世によって宮廷がマドリードへ移されると街の発展は停滞します。それでも宗教的重要性は依然も高く、現在もスペインの首座司教の座にトレド大司教座があるなど、スペイン最大のカトリック教会の総本山となっています。その他にもカスティーリャ王国財務官のサミュエル・レビによって建てられたトランシト・シナゴーグなどトレドでは多様な建築物を見ることができます。
幾度も苦難を経験した歴史都市トレドのランドマーク「アルカサル」
トレドの象徴と言えるのが街の頂上部に建つアルカサルです。元々はローマ人が宮殿として使用していたもので、アルフォンソ6世および10世の時代に再建され、四角形の建物の角に塔を持つ姿となりました。16世紀にもカルロス5世の命により再建が重ねられ、そのファサードは時代によって様式の違いを見ることができます。アルカサルはこれまでに何度も火災や破壊の脅威に直面してきました。1170年に最初の火災を経験すると、その100年後にはフランス軍により放火されます。1867年と1882年に改修されますが、その後も何度か火災に見舞われてきました。そして、スペイン内戦時に陸軍士官学校が置かれると、紛争終結時に完全に破壊されてしまいます。その後、再建されたアルカサルですが、現在では陸軍の事務所と博物館として使用されています。
アクセス
マドリード「アトーチャ駅」から「トレド駅」まで高速列車で約30分。
執筆協力者PROFILE
広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。
Details
トレド大聖堂
Santa Iglesia Catedral Primada de Toledo
アルカサル
Alcázar de Toledo
トランシト・シナゴーグ
Sinagoga del Tránsito
エル・クリスト・デ・ラ・ルス
El Cristo de la Luz
アクセス
マドリード「アトーチャ駅」から「トレド駅」まで高速列車で約30分。
執筆協力者PROFILE
広島県出身。平和継承の入口として世界遺産検定を受験。現在は認定講師として大学、専門学校等で講座実施。2021年にポッドキャスト「行きたくなる世界遺産!」(地域情報/トラベル部門最高2位獲得)を開設しパーソナリティを務めつつ世界遺産関連施設で番組イベントを開催。
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