富岡製糸場と絹産業遺産群
富岡製糸場の中心となる繰糸場の内部。柱の少ないトラス構造を採用し、繰糸器のスペースを確保している

遺産DATA

地域 : 東・東南アジア 保有国 : 日本国 所在地 : 群馬県富岡市、伊勢崎市、藤岡市、甘楽郡下仁田町 分類 : 文化遺産 登録年 : 2014年 登録基準 : (ii) (iv) 遺産の面積 : 0.072㎢ バッファ・ゾーン : 4.146㎢ 座標 : N36 15 19 E138 53 16

about

絹の近代化の中心となった4つの舞台

富岡製糸場と絹産業遺産群は、高品質な生糸の大量生産を実現させた技術革新と交流の証です。構成遺産は「富岡製糸場」「田島弥平旧宅」「高山社跡」「荒船風穴」の4件で、生糸の大量生産に必要な製糸技術と、原料となる繭の増産を支える養蚕技術の両面で大きな発展がありました。中心的な役割を担ったのが、1872年に日本政府がフランスから最新の器械製糸技術を導入して設立した富岡製糸場です。その後日本は、独自の伝統と西洋技術の融合によって、世界に通用する絹の生産拠点となっていきました。

フランスの知恵と日本の技術の融合

富岡製糸場の建設には、フランス人生糸検査技師ポール・ブリュナの協力があり、設計を手がけたのは同じくフランス人技師のオーギュスト・バスチャンでした。製糸場は、養蚕が盛んだった地域の中心であり、広い土地と豊かな水資源が得られる、鏑川に面した崖の上に建てられました。建物には、トラス構造やガラス窓などの西洋建築の要素が取り入れられる一方で、日本瓦の屋根や漆喰を使った目地など、日本独自の技術も活かされています。このように、富岡製糸場は建築そのものからも、日仏の技術交流と融合の姿を語っています。

絹産業を支えた養蚕の革新

生糸の安定供給を支えたのは、製糸技術だけではありません。繭そのものの品質と量を高めるために、養蚕技術も大きく進化していきました。そのひとつが、田島弥平が広めた「清涼育」。これは、自然の風を利用して蚕室の空気を循環させる換気システムで、病気の予防や健康な蚕の育成に効果がありました。さらに高山社では、火を使って温度を管理する温暖育と、換気による清涼育を組み合わせた「清温育」が開発され、より安定した育成が可能になりました。養蚕から製糸までの流れを支える知恵と工夫が、日本の絹産業を根底から支えていたことがわかります。

アクセス

【富岡製糸場】高崎駅から上州富岡駅まで電車で約40分、上州富岡駅から徒歩10分ほど。

執筆協力者PROFILE

KANAE
KANAE
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/Podcast「行きたくなる世界遺産!」パーソナリティ

世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。

遺産DATA

保有国 : 日本国
所在地 : 群馬県富岡市、伊勢崎市、藤岡市、甘楽郡下仁田町
分類 : 文化遺産
登録年 : 2014年
登録基準 : (ii) (iv)
遺産の面積 : 0.072㎢
バッファ・ゾーン : 4.146㎢
座標 :N36 15 19 E138 53 16

アクセス

【富岡製糸場】高崎駅から上州富岡駅まで電車で約40分、上州富岡駅から徒歩10分ほど。

執筆協力者PROFILE

KANAE
KANAE
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/世界遺産検定マイスター/Podcast「行きたくなる世界遺産!」パーソナリティ

世界遺産をテーマに、文化・歴史・自然の魅力を多角的に伝えるPodcast番組を展開。遺産の価値に加え、現代に通じる暮らしの哲学や自然共生の視点を取り入れた発信を行う。大学や世界遺産関連施設での講演・イベント出演のほか、2025年大阪・関西万博での登壇も経験。