ヴェネツィアとその潟
東方貿易で栄華を極めた水の都

遺産DATA

地域 : ヨーロッパ 保有国 : イタリア共和国 分類 : 文化遺産 登録年 : 1987年 登録基準 : (i) (ii) (iii) (iv) (v) (vi) 遺産の面積 : 701.764㎢ 座標 : N45 26 3.5 E12 20 20.2

about

潟(ラグーナ)に形成された海上貿易拠点

イタリアのアドリア海に位置するヴェネツィアは、118の島と176の運河、400以上の橋からなる都市です。異民族の攻撃から避難したウェネティ人が潟(イタリア語でラグーナ)に都市を築きました。7世紀には本格的な建物が建てられ、8世紀には形式上ではビザンツ帝国に従属しつつも、実質的に独立を保ち、東方貿易の拠点として発展しました。10世紀には主要な海運国となり、1797年のナポレオン1世から侵略を受けるまで、約1,100年の間自治都市として独立し続けました。

ヴェネツィアの潟とヴェネツィアの建築

ヴェネツィアの潟の面積は約550㎢で、その起源は約6,000年前の氷河期の終わりに遡ります。塩性の湿地である潟周辺には多様な植物や鳥類が生息しています。潟には多くの島々が点在し、島ごとに役割や機能が異なります。泥土の地盤であるヴェネツィアは建物を建てる際に、無数の杭を打ち込み土台をつくります。その上に耐水性に優れたイストリア石という石灰質の石を積むことで基盤が形成されています。

ヴェネツィアの地盤沈下と観光

ヴェネツィアは現在、地盤沈下が進んでいます。これは地下水や天然ガスの採取の影響であると言われています。また高潮や近年では豪雨や洪水による被害も増加しており、歴史的建造物や所蔵されるコレクションの一部にも被害が発生しています。さらにオーバーツーリズムによる環境への影響も深刻です。そのためヴェネツィアでは1986年から救済団体を組織し、救済活動を行っています。またクルーズ船の潟内への入港も規制されています。

アクセス

ヴェネツィアのマルコ・ポーロ空港から、ヴェネツィアの主要ターミナルであるローマ広場まで5番エアロバス路線で約20分。トレヴィーゾ空港からは、ローマ広場までATVOバスで約1時間。

執筆協力者PROFILE

角濱 さくら
角濱 さくら
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/大学生

筑波大学人文・文化学群人文学類在学。2021年度「世界遺産✕SDGsチャレンジ!」小論文部門、2022年度「世界遺産✕SDGs教員養成プログラム」で最優秀賞。現在は中央アジアを中心とする無形文化遺産の保護や活用について関心がある。

Details

サン・マルコ大聖堂

サン・マルコ大聖堂

Basilica di San Marco

9世紀に持ち込まれたサン・マルコの聖遺物を収蔵するために着工された。一時火災により焼失したが、1094年に再建され、現在のビザンツ様式の建築になった。内部のモザイク画にはヴェネツィアの歴史や聖書の内容が描かれている。
ドゥカーレ宮殿

ドゥカーレ宮殿

Palazzo Ducale

9世紀に建造され、後にヴェネツィア共和国総督の邸宅へ改築された。16世紀の画家ティントレットが描いた「天国」でも有名。ゴシック芸術の傑作と称され、室内は著名な芸術家たちによって装飾されている。
サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂

サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂

Basilica Santa Maria della Salute

17世紀にヴェネツィアを襲ったペストから街を救うために建設された。毎年11月21日には聖母マリアにペストから救ってくれたことに対する感謝と敬意を表す祭典が開催される。聖堂にはヴェネツィア派の絵画が多く残されている。
ムラーノ

ムラーノ

Murano

ヴェネツィアの潟内の島のひとつ。13世紀からガラス生産が行われ、現在でも島内にはガラス工房が点在し、伝統的な製法でガラス製産が行われている。歴史的な教会も数多く残っている。
トルチェッロ

トルチェッロ

Torcello

潟内の島のひとつで、長年にわたり著名人や王族、政治家を魅了してきた。アーネスト・ヘミングウェイもその一人である。ヴェネツィア出現以前から政治や経済・宗教の中心地で、現存する建造物は当時の華やかな時代の面影が残る。

遺産DATA

分類 : 文化遺産
登録年 : 1987年
登録基準 : (i) (ii) (iii) (iv) (v) (vi)
遺産の面積 : 701.764㎢
座標 :N45 26 3.5 E12 20 20.2

アクセス

ヴェネツィアのマルコ・ポーロ空港から、ヴェネツィアの主要ターミナルであるローマ広場まで5番エアロバス路線で約20分。トレヴィーゾ空港からは、ローマ広場までATVOバスで約1時間。

執筆協力者PROFILE

角濱 さくら
角濱 さくら
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師/大学生

筑波大学人文・文化学群人文学類在学。2021年度「世界遺産✕SDGsチャレンジ!」小論文部門、2022年度「世界遺産✕SDGs教員養成プログラム」で最優秀賞。現在は中央アジアを中心とする無形文化遺産の保護や活用について関心がある。