Ir.D.F.ヴァウダヘマール:D.F.ヴァウダ技師による蒸気水揚げポンプ場
蒸気水揚げポンプ場は現在も稼働中。増水時には短時間で数百万リットルの水を排水できる

遺産DATA

地域 : ヨーロッパ 保有国 : オランダ王国 所在地 : Lemmer, Lemsterland Municipality, Province of Friesland 分類 : 文化遺産 登録年 : 1998年 登録基準 : (i) (ii) (iv) 遺産の面積 : 0.0732㎢ バッファ・ゾーン : 0.2068㎢ 座標 : N52 50 44.988 E5 40 44

about

オランダの水力工学の頂点を極めたポンプ場

オランダ北部、フリースラント州レメルにある世界最大の排水施設です。国土の大部分が海抜0mかそれ以下の低地であるオランダでは、排水設備はたいへん重要な社会インフラです。風力を利用した揚水装置「風車」はこの国の象徴となっていますが、19世紀後半以降は蒸気機関が導入され、そのひとつがこの揚水ポンプ場です。1920年に水利技師のD.F.ヴァウダが建設したもので、現在でも稼働しています。これはオランダの水力工学の頂点を極めたポンプ場で、かつ20世紀を代表する工業デザインの好例と言えます。

技師D.F.ヴァウダの揚水ポンプ場

遺産名の「Ir.D.F.ヴァウダヘマール」はカタカナにすると「イル・デー・エフ・ヴァウダヘマール」となります。この「Ir.(イル)」は、オランダで工学の学位を持つ「技師(インヘニウル;Ingenieur)」の学位称です。英語圏で博士号を持つ人が名前の前に「Dr.(ドクター)」とつけるのと同じです。ですので「Ir.D.F.ヴァウダ」というのは「D.F.ヴァウダ技師」という意味です。現在のオランダの高等教育過程には、一般的な大学(Universiteit)と、実践的な職業教育を行う高等職業教育校(Hogeschool)があります。どちらで工学の学位を得たかによって技師の称号も異なり、大学の場合は「Ir.」、高等職業教育校の場合は「Ing.」となります。学位を持たずに称号を用いると、罰金が科せられるそうです。また、ヴァウダの後につく「ヘマール(gemaal)」というのはオランダ語で「揚水ポンプ」を指すので、この遺産名「Ir.D.F.ヴァウダヘマール」は「D.F.ヴァウダ技師の揚水ポンプ場」という意味になります。

アクセス

アムステルダムから最寄りのヘーレンフェーン駅まで列車でおよそ2時間。

執筆協力者PROFILE

細谷 正文
細谷 正文
大東文化大学・フェリス女学院大学講師/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

早稲田大学卒業。損害保険会社勤務の傍ら世界遺産を勉強し、退職後いくつかの大学にて関連講座を担当。現在は大学講師と趣味の音楽(クラシック歌手)の二刀流。

遺産DATA

保有国 : オランダ王国
所在地 : Lemmer, Lemsterland Municipality, Province of Friesland
分類 : 文化遺産
登録年 : 1998年
登録基準 : (i) (ii) (iv)
遺産の面積 : 0.0732㎢
バッファ・ゾーン : 0.2068㎢
座標 :N52 50 44.988 E5 40 44

アクセス

アムステルダムから最寄りのヘーレンフェーン駅まで列車でおよそ2時間。

執筆協力者PROFILE

細谷 正文
細谷 正文
大東文化大学・フェリス女学院大学講師/NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

早稲田大学卒業。損害保険会社勤務の傍ら世界遺産を勉強し、退職後いくつかの大学にて関連講座を担当。現在は大学講師と趣味の音楽(クラシック歌手)の二刀流。