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世界遺産が生まれるきっかけとなった国立公園
イエローストーン国立公園は、世界遺産条約が採択されるちょうど100年前の1872年に誕生しました。この100年というのは偶然ではありません。1971年2月、アメリカ合衆国大統領のリチャード・ニクソンが、「イエローストーン国立公園」設立100周年に当たる1972年に自然遺産と文化遺産を共に保護する国際的な体制を立ち上げると演説します。そこから様々な案が一気にまとめられ、世界遺産条約がユネスコ総会で採択されました。そして「イエローストーン国立公園」は、1978年に世界で最初に登録された世界遺産のひとつになりました。
マグマによる「ホットスポット」が生み出す多様な地形
アメリカ北西部にあるイエローストーン国立公園は、アメリカ合衆国最大規模の自然公園です。この一帯は、約210万年前頃の北米プレートの移動によって、地中の浅い場所に位置するマグマ溜りの上に位置するようになりました。そのため火山活動や断層運動、氷河作用などによって、カラフルな熱水の泉や定期的に熱水を噴き上げる間欠泉、湧き出した温泉に含まれる石灰が固まった石灰棚、深い谷や山脈、轟音と共に大地を削るイエローストーン川など、美しく多様な地形が作られました。
手付かずの自然と定期的な火災が生み出す多様性
イエローストーン国立公園の中で道路やインフラなどに開発されているのは2%ほどで、90%以上は手付かずの自然の状態で保護されています。そのため、バイソンやヘラジカ、プロングホーン、グリズリー、アメリカクロクマ、オオヤマネコなど、多くの野生動物が生息しています。また生態系バランスの保護のため、一度は公園内で絶滅したオオカミを1995年にカナダとモンタナ州から再導入しました。この地域では火災が起こった際、積極的には消火活動を行わず、多くの場合は自然の鎮火に任せます。定期的な火災とそこからの自然な回復が、森林や土壌、生物の多様性を豊かにしているそうです。
アクセス
日本からワイオミング州のジャクソン空港まで飛行機で約18時間。そこから車で約90分。
執筆協力者PROFILE
北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。
Trivia
イエローストーン国立公園の約96%がワイオミング州、約3%がモンタナ州、約1%がアイダホ州にあります。これが世界で最初の国立公園誕生と関係しています。実は自然保護活動の先駆けとなったヨセミテは、イエローストーンよりも先の1864年に州立公園として保護されていました。これはヨセミテがカリフォルニア州にあったためです。ヨセミテを参考に整備されたイエローストーンは複数の州にまたがっていたため、州立公園とならず国立公園になりました。また国立では、アーカンソー州のホット・スプリングスが1832年に国立保護区になっており、ここが国立公園になっていたらイエローストーンは最初の国立公園ではなかったかもしれません。
Details
アクセス
日本からワイオミング州のジャクソン空港まで飛行機で約18時間。そこから車で約90分。
執筆協力者PROFILE
北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。
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