ザゴリの文化的景観
ギリシャの山間にあるザゴリの伝統的な村のひとつ、パピンゴ村

遺産DATA

地域 : ヨーロッパ 保有国 : ギリシャ共和国 所在地 : Municipality of Zagori, Regional Unit of Ioannina, Region of Epirus 分類 : 文化遺産 登録年 : 2023年 登録基準 : (v) 座標 : N39 54 19 E20 49 11

about

美しき山脈のもとに広がる田園風景

ギリシャ北西部のエピルス地方、ピンドゥス山脈の西斜面に沿って広がるザゴリは、およそ45の伝統的な村々で構成されています。ザゴリとはスラヴ語で「山の向こう」を意味し、何千年も前から人が住んでいましたが、高山地域であるため、人の移動は困難でありました。伝統的な村に関してはおそらくビザンツ帝国の時代からあったとされていて、世界遺産に登録されている現在のような村は、オスマン帝国の時代からとされています。18世紀から19世紀にかけては、地元の職人がアーチ状の橋を建設するなど、インフラ設備を強化しました。また、田園風景も素晴らしく、文化的景観が認められています。世界遺産には45の村のうち、保存状態が良好な20の村が登録されています。

移住者(エクスパット)からの送金に支えられた村

ザゴリは人里離れた山岳地に位置するため、一帯で生産できる食料は十分ではなく、しばしば食料の輸入が必要となりました。12世紀以降、ザゴリの男性はルーマニアやバルカン半島、中央ヨーロッパ、ロシア、コンスタンティノープルなどへと移り住み、パン職人や宿屋、画家などとして働きました。一方で女性や子ども、高齢者は村に残り、畜産や農業を続けました。海外へと移住した人々(エクスパット)からの送金や寄付によって、村には公共インフラや住宅が整備され、18世紀には大規模な石橋を建てられるまでになりました。

中央広場を中心に広がる人々のコミュニティ

伝統的な村々はプラタナスの木のある中央広場を中心に構成されており、一部の村は地元コミュニティに管理された神聖な森に囲まれています。また、中央広場は社交的な集まりや宗教行事の中心地として機能しており、村人たちの心の拠り所となっています。建物のほとんどは伝統的な石造りであり、住居はもちろん、石畳の道や93の石造アーチ橋からも、その伝統的建築技術を垣間見ることができます。昨今は過疎化が問題となっていますが、観光業に力を入れて、その収入で伝統的な建築物を修復、維持していくことが新たな課題となっています。

アクセス

首都アテネから車で約8時間。アクセスは容易ではない。

執筆協力者PROFILE

藤井 翼
藤井 翼
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

世界遺産検定初代マイスターの一人。地歴公民科の教諭として7年間大阪の公立高校で勤務。現在、世界遺産アカデミー認定講師として大学や私立中学で講義、授業を展開。また、自身のYouTubeチャンネル「翼の世界史チャンネル」で受験世界史の動画を配信。

遺産DATA

所在地 : Municipality of Zagori, Regional Unit of Ioannina, Region of Epirus
分類 : 文化遺産
登録年 : 2023年
登録基準 : (v)
座標 :N39 54 19 E20 49 11

アクセス

首都アテネから車で約8時間。アクセスは容易ではない。

執筆協力者PROFILE

藤井 翼
藤井 翼
NPO法人世界遺産アカデミー認定講師

世界遺産検定初代マイスターの一人。地歴公民科の教諭として7年間大阪の公立高校で勤務。現在、世界遺産アカデミー認定講師として大学や私立中学で講義、授業を展開。また、自身のYouTubeチャンネル「翼の世界史チャンネル」で受験世界史の動画を配信。